096 褒め言葉

二見奈津子が自ら料理を作ってもてなすというニュースに、佐々木家の皆が驚きと興奮を覚え、早々に佐々木和利の家に集まった。

佐々木和利は一気に混み合ったリビングを見て、顔を曇らせた。「昼食なのに、なんでこんなに早く来たんだ?」

坂元慶子は息子の表情を無視して、にこやかに言った。「奈津子の手伝いができないかと思って来たのよ!料理には人手が必要でしょう!」

彼女は息子を押しのけてキッチンに入った。

佐々木理恵は兄の前であくびをして、彼を押しやった。「私、すごく眠いから、あなたたちの部屋で寝かせて。」

佐々木宗と佐々木敬の父子はバルコニーで二見奈津子の絵を鑑賞し、絶賛していた。

佐々木和利は自分の家で、まるで邪魔な置物のように立っていた。

彼はため息をつき、やはりキッチンに入った。

坂元慶子は感嘆しながら奈津子に言った。「まあ!奈津子ちゃん、なんでも出来るのね!すごいわ!こんなに素晴らしい人、うちのバカ息子は何世の善行の結果なのかしら!」

「母さん、リビングで休んでいたら?お茶を入れるよ。」佐々木和利は、これ以上恥をかかないように制止した。

坂元慶子は振り向きもせずに手を振った。「お茶はいらないわ!」

「この魚も煮られるの?奈津子ちゃん、本当にすごいわ!」坂元慶子は褒め続けた。

佐々木和利は額に手を当てた。あの有名な佐々木さんが、こんなに世間知らずな様子を見せるなんて、恥ずかしすぎる。

二見奈津子は料理をしながら、坂元慶子に作る料理の手順と順序を説明し、佐々木和利を見かけると、きっぱりと言った。「和利さん、にんにくの皮むきを手伝って!」

その口調は断る余地がなかった。

佐々木和利は黙ってにんにくを見つけ、真面目に皮をむき始めた。

実母という電灯泡がいても、奈津子と一緒にいる方が家族らしい感じがした。

佐々木理恵が二度寝から目覚めて、ぼんやりと階段を降りてきた頃には、二見奈津子の料理もほぼ完成していた。

佐々木理恵は階段に立ち、満卓の料理を見てぼう然とした。「すごい!お義姉さんが全部作ったの?出前じゃないの?ホテルのシェフを呼んだんじゃないの?」

ちょうど料理を運んでテーブルに並べていた佐々木和利は、手を返して彼女の頭を叩いた。「お前みたいに寝てばかりいる人間と一緒にしないでくれ。」