佐々木和利は食事をしながら黙って聞いていて、二見奈津子がこの家族にとてもよく馴染んでいると感じた。
テーブルに置いてあった携帯電話が突然振動し始めた。長谷川透からの電話だった。
同時に、二見奈津子の携帯電話も鳴り始めた。
二人とも立ち上がって脇に行って電話に出た。
「奈津子、どのプラットフォームでもいいから見てみて。あなたと和利さんがトレンド入りしてるわ」藤原美月の声には少し興奮が混じっていた。
「え?」二見奈津子は首を傾げた。
「タイミングがいいわね。こんなことになるなら、あんなに宣伝に力を入れなくても良かったかも。最初からあなたたち二人を表に出して注目を集めれば良かったのに」藤原美月は無駄な努力をしたことを後悔していた。
二見奈津子は電話を切らずに、エンターテインメントニュースを開いた。
佐々木和利の口にキャンディーを入れている場面が高画質で切り取られていた。
「億万長者の傲慢な社長が新進女性監督に心を奪われる」
二見奈津子は額に手を当て、無力感でいっぱいだった。
佐々木和利が近づいてきて、二見奈津子は諦めたように彼が見せる携帯電話の画面を見た。そこには二人が見つめ合う別の写真があった。彼がスーパーのカートを押し、彼女が手に持った手羽先を笑顔で話している温かな光景に、二見奈津子は直視できなかった。
「あなたたちに影響はないのか?」佐々木和利は深刻な声で尋ねた。二見奈津子に、そして電話の向こうの藤原美月にも。
「あります!」
「ありません!」
二見奈津子と藤原美月が同時に異なる答えを返した。
二見奈津子はため息をつきながら「晴子さん、話題に便乗するのは嫌いだったじゃないですか?」
藤原美月は「誰の話題に便乗するかによるわ。あなたの話題なら問題ないでしょう?他人に譲るよりはましよ」
二見奈津子は言葉に詰まった。
佐々木和利は二見奈津子から電話を受け取り、藤原美月に尋ねた。「では、私たちは今何をすべきですか?」
藤原美月は佐々木和利の謙虚な態度に満足そうだった。「佐々木社長、もし奈津子のことを公にしたいなら、堂々と普段通りにすればいいわ。でも、もし何か懸念があって、まだ公表したくないなら、話題を抑える必要があるわね」
「必要ありません!」佐々木和利は断固として言った。