083 自薦

「いいえ!違います、あなたならできます!絶対できます!」田村良太郎は前に出て、佐々木理恵から目を離さずに見つめた。

「本当ですか?本当なんですか?」佐々木理恵は喜びを隠せなかった。

田村良太郎は振り返って尋ねた。「みなさんはどう思いますか?」

藤原美月は頷き、二見奈津子はため息をついた。

「お義姉さん、不満なんですか?」佐々木理恵は落ち込んだ表情を見せた。

二見奈津子は額に手を当て、弱々しく言った。「まずは家に帰って、ご両親の意見を聞いてみたらどう?」

佐々木理恵は目を見開いた。「私にできないとは思っていないんですね?」

二見奈津子は少し苦しそうに頷いた。

佐々木理恵の目が輝いた。「それなら大丈夫です。両親の意見なんて重要じゃありません。それに、何か意見があるはずないじゃないですか?お義姉さんが私にできると思うなら、準備を始めます!」

田村良太郎は細かいことは気にせず、キャスティングディレクターであり演出家として、すぐに佐々木理恵を引き寄せ、活気づいて言った。「お嬢さん!これからはあなたが私の救世主です!命の恩人ですよ!いつか必ず恩返しします!今はこちらに来てください。演技の打ち合わせをしましょう。阿部真央、来て——あ、そうだ!来なくていいです。まだ出番じゃないですからね!そこの二人!悪徳養父母役の方々、こちらに来てください。ちょっと通してみましょう!通してみましょう!」

みんなの気持ちが一気に高まり、佐々木理恵と田村良太郎を囲んで集まり、改めて演技の打ち合わせを始めた。それでも物足りず、誰かが声を上げると、すぐにみんなで撮影現場に移動した。

藤原美月は困惑した表情の二見奈津子に言った。「大丈夫よ。見た目は幼くても、しっかりした考えを持っているから、心配する必要はないわ。もし彼女が本当にできるなら、私と田村で謝りに行くわ。」

二見奈津子は苦笑いを浮かべた。他に何が言えただろうか。

撮影チーム全体が大きな起伏を経験し、士気が高まっていたため、再撮影のシーンはとてもスムーズに進んだ。佐々木理恵は非常に頑張り、再撮影部分の半分を一気に撮り終えた。田村良太郎が役の感情の育成を重視していなければ、時間が遅くなっていることにも気付かなかっただろう。

二見奈津子は前に出て、佐々木理恵に水とタオルを渡しながら、心配そうに尋ねた。「疲れた?」