111 餃子

伊藤恵が逮捕されたというニュースは瞬く間に業界中に広まった。

高橋真理子は記者会見を開き、自分の身に起きた出来事を涙ながらに語った。

彼女は運命の人に出会えたと思っていた。彼氏は裕福な家庭の息子で、気前が良く、彼女にとても優しかった。彼氏は海外で商談があると言い、一人では寂しいから数日間一緒に付き添ってほしいと頼んできた。

純真な彼女は、恋愛への憧れでいっぱいだった。マネージャーには内緒で彼氏についていくことにした。たかが一週間の仕事をサボるだけで、大したことではないと思った。契約解除になっても構わないと思った。どうせ彼氏はお金持ちで、違約金も払うと約束してくれていたのだから。

しかし予想外のことが起きた。海外に着くと、彼氏の態度が一変した。パスポートを取り上げられ、レイプされ、最後には外国人の男に売り飛ばされてしまった。

その男は彼女を風俗店に連れて行った。彼女は必死に抵抗したが、殺されそうになった。もし偶然にも抗争に巻き込まれなければ、そこで命を落としていたかもしれない。逃げる途中で親切な同胞に出会い、助けられて帰国することができた。

高橋真理子は記者会見で何度も崩れ落ちるように泣いた。

帰国後、真っ先に警察に通報し、その男を逮捕させた。その男はただのホストで、伊藤恵からお金をもらい、金持ちの息子を装って彼女を騙したのだった。

今や彼女のキャリアは台無しになってしまった。自分を一から育ててくれたマネージャーにも申し訳なく、ドタキャンしてしまった『午後四時半』の制作陣にも申し訳ない気持ちでいっぱいだった。これからは心を入れ替えて生きていくつもりだが、自分を陥れた人間は決して許さない、必ず法の裁きを受けさせると誓った。

この事件は社会に大きな影響を与えた。

伊藤恵は二見娯楽の所属で、二見華子のマネージャーだった。二見氏は高橋真理子の記者会見の前に伊藤恵が既に退職したと発表したものの、世間はそれを受け入れなかった。結局のところ、これらの行為は彼女が在職中に行ったものであり、二見氏がこのような言い逃れをするのは、世間を愚弄しているとしか思えなかった。

テレビで高橋真理子の記者会見の様子が放送されている時、二見奈津子は佐々木家で皆と一緒に餃子を作っていた。