206 恩返し

二人は一口食べると、驚いて顔を上げて見つめ合い、続けざまに美味しいと褒め称えた。

二見奈津子は目を細めて笑った。「美味しければもっと食べてください。」

養父母は彼女の作った料理を一度も食べることができなかったが、今、祖父母が彼らの代わりに食べることで、二見奈津子の願いも叶えられたのだった。

夕食後、佐々木和利は佐藤健二に引っ張られて、彼らの投資計画について相談することになった。

彼らの一人娘を救ってくれたこの小さな町は、住民から草木に至るまで、すべてが恩人だった。彼らは必ずこの恩に報いなければならない。この地を発展させ、娘と婿の魂がここで安らかに眠れるようにしたい。たとえ生死の境を隔てていても、彼らは精一杯の努力をして娘に幸せを与えたいと思っていた。

美咲はこっそりと涙を流し、井上邦夫と共に黙々と計画に参加した。親から子への愛ほど心を打つものはないのだから。

二見奈津子は田中弥生と共にゆっくりと町の大通りや路地を歩きながら、幼い頃から今までの思い出を語って聞かせた。田中弥生は真剣に耳を傾け、娘の声に導かれて過去へ戻り、娘のそばにいられたらと切に願った。たとえ魂だけでもいいから。

二見奈津子は彼女の気持ちを察して、優しく言った。「お母さんはとても幸せで、穏やかでした。お父さんと一緒にとても幸せだったんです。ここは母の最も愛した場所です。おばあちゃん、今この瞬間も、母はきっとおじいちゃんとおばあちゃんを感じていて、一緒にここを歩き回っているはずです。きっととても喜んでいるはずです。母も、おじいちゃんとおばあちゃんに対するのと同じように、自分の両親に幸せになってほしいと願っているはずです。そうですよね?」

田中弥生は立ち止まり、思わず周りを見回した。周囲の建物や草木に目を向けると、目を閉じて深く息を吸い込んだ。涙が頬を伝って流れ落ちたが、唇の端はかすかに上がり、笑みを浮かべた。

「いい子ね。あなたの言う通りよ。私の娘はきっと、私たち両親が健康で長生きすることを願っているわ。いつか必ず再会できる日が来るわ。あの子はとても優しい子だったから、その優しさを引き継いで、もっと多くの人々を助けていきましょう。」田中弥生は目を開け、少し興奮した様子で二見奈津子を見つめた。