201 盗み接吻

佐々木和利は微笑んだ。

平和で愛に満ちた環境で育ち、感情の安定した仲の良い両親がいたからこそ、二見奈津子はこのように優しい性格で、そして勇敢で、楽観的で、優しく、芯の強い人になれたのだ。

佐々木和利は星を見上げながら言った。「うちで物語を語るのは、いつも兄貴の役目だったんだ。小さい頃は兄貴のことを尊敬していたけど、大きくなってから、あいつがその場で即興で作り話をしていたって気づいたんだ。僕と妹をだましていたんだよ。疑問を投げかけたら、僕をぶん殴って、かなわないから従うしかなかった。大人しく本を読んで、もう兄貴に物語を語ってもらわないようにした。そしたら今度は妹をだますようになった。でも妹はお姫様の物語が好きで、兄貴は英雄譚が好きだったから、結局妹の面倒は僕に押し付けられたんだ。」

二見奈津子は笑いながら尋ねた。「お父さんとお母さんは?」

佐々木和利は軽く咳をして言った。「デートに夢中さ。君の両親は仲が良くても君のことを大切にしてくれたけど、うちの両親は仲が良すぎて、僕ら三人は邪魔者扱いで、好きなように育てさせられたんだ。」

二見奈津子は笑って言った。「でも三人とも立派に育ったじゃないですか。みんな優秀で、仲も良くて、親孝行だし。」

佐々木和利は肩をすくめて溜息をつきながら言った。「そうするしかないだろう?両親は変えられないんだから。おじいちゃんが一番すごかったんだ。小さい頃、僕たちに『兄弟姉妹というのは、今生限りのものだ。お前たち三人は、天国で長い時間かけて選んで、同じ家族に生まれてきたんだ。人は大きくなったら家を離れていく。一緒にいられる時間はこの数年だけだ。大切にしなさい。喧嘩せずに、仲良く暮らしなさい』って教えてくれたんだ。」

二見奈津子は頷いて言った。「おじいちゃんの言う通りですね。」

「僕ら三人もそう思っていたんだ。だからね、おじいちゃんこそが達人だったんだよ。たった数言で僕たちの仲の良さの基礎を築いてくれた。」佐々木和利は感慨深げに言った。

二見奈津子は考え込んでから、そうだと思った。そう考えると、おじいちゃんは本当に先を見据えていたのだ。

おじいちゃんの慈愛に満ちた目と賢い眼差しを思い出すと、思わず笑みがこぼれた。