佐々木和利は、とても理にかなっていると感じた。
「私が思うに、斎藤由美は意図的に兄夫婦を引き裂こうとしているわ。しかも手段を選ばないような」と二見奈津子は心配そうに言った。
佐々木和利は言った。「大丈夫だよ。長谷川透が佐々木家に警告を出すはずだ。ちょうど最近、佐々木家が請け負っているプロジェクトがあるし、あの弁護士が帰って説明してくれるだろう。今は斎藤由美が何か細工するのが心配だが、メディアの方は見張らせておく」
二見奈津子は頷いた。「ええ、私も知り合いのメディアに声をかけておくわ。ネットは発達してるけど、こういうゴシップニュースで影響力があるのは限られた数社だもの」
佐々木和利は少し考えて、不安になり、もう一度長谷川透に電話をかけた。
二見奈津子は笑って言った。「あなたと長谷川透の方が兄弟みたいね。井上邦夫たちとは少し違う感じ」
佐々木和利は頷いた。「長谷川透の祖父は昔から私の祖父の執事だったんだ。数年前に亡くなったけどね。長谷川透の両親は彼が小さい頃に事故で亡くなってしまって、常盤おじいさん一人で子育ては大変だったから、祖父が長谷川透を引き取ることにしたんだ。だから彼は私たちと一緒に育って、ほとんど家族同然なんだよ」
「でも彼は常盤おじいさんの言いつけを守って、自分を部外者、というか使用人のように扱っている。うちの家族は誰一人そんな風に思っていないのに。そのことで兄と私で彼を殴ったこともあるけど、彼は頑固すぎて、かといって本気で手を出すこともできなくて」
「仕方なく、彼が引っ越すのも、会社で馬車馬のように働くのも見過ごすしかなかった。祖父から両親まで、誰も彼を部外者扱いしたことはないし、私たちが持っているものは彼にも同じように与えられている。ただ、彼のプライドを考慮しなければならなくて。彼は井上邦夫たちを良く思っていないから、あまり付き合わないんだ」
二見奈津子は初めて彼から長谷川透のことを聞いて、あの几帳面な青年がなぜそれほど忠実で、かつ周りと馴染めないのかを理解した。
向井輝はシャワーを浴びて居間に来ると、佐々木光がすでにくつろぎ着に着替えて、ソファに座って彼女の商品カタログを見ているところだった。職業柄、佐々木光はリラックスしているときでも姿勢が正しかった。