向井輝の悔しさ、恐れ、後悔が涙となって溢れ出し、佐々木光の胸元の服を濡らした。これが彼の軍服だと気づき、慌てて胸元から離れ、心の中で極限まで悔しさが募り、佐々木光の肩を叩きながら、声を上げて泣き出した。
佐々木光は彼女の後頭部を押さえ、自分の胸に寄り添わせて泣かせた。彼女がこれほど悔しそうにしているのを見たことがなく、胸が痛むほど心配だった。
彼は思い切って身を屈めて彼女を抱き上げ、額を寄せ合わせた。「いい子だから、もう泣かないで。家に帰ろう。外には戦友たちがいるから、泣いているところを見られるのは少し恥ずかしいだろう」
向井輝は急いで泣き声を止め、小さく啜り泣きながら、降ろしてもらおうともがいたが、佐々木光は許さず、そのまま彼女を抱えて外へ向かった。向井輝はすでに疲れ果てていて力が残っておらず、顔を彼の胸に埋めたまま、抱かれて歩くことを受け入れた。
この場所には二度と来ることはないだろう。恥ずかしいも何も、もうどうでもよかった。
斎藤由美は外に出るなり、目の前の光景に心が粉々に砕けた。
「佐々木光!待ちなさい!」彼女は弁護士の制止を振り切り、佐々木光の前まで早足で歩み寄り、二人の前に立ちはだかった。
「あなた、この女の過去を知っているの?どれだけダメな人間か分かってるの?それなのにこんな大事そうに抱きかかえて!」斎藤由美は激昂して言った。
向井輝が降ろしてもらおうともがくと、佐々木光は片手で彼女の頭を押さえ、振り向かせないようにし、もう片方の手でしっかりと支えて、もがくのを止めさせた。
「彼女の過去なんて知る必要はない。良い過去なら、もっと早く彼女の側にいて輝かしい姿を見守れなかったことを後悔する。悪い過去なら、もっと早く彼女の側にいて守ってあげられなかったことを後悔する。彼女がどんなにダメでも構わない。私が一つ一つ修復していくから。向井輝は佐々木光の宝物だ」
「斎藤さん、確かに私はあなたと向井輝より先に知り合いました。でも私たちは一度も恋人同士だったことはありません。どうか誤解を招くような言い方で向井輝を惑わさないでください。私と彼女の間に第三者は存在しませんし、あなたが第三者になることもできません」佐々木光は向井輝を抱きかかえたまま、斎藤由美の傍らを大股で通り過ぎた。
向井輝は手を伸ばして佐々木光の腰に回した。