水を十分飲んだ後、奈津子は蛇口の横にもたれかかって考えていた。容器がないのに、どうやって和利に水を飲ませればいいのだろう?
和利の怪我の具合からすると、きっと自分と同じように歩けないだろう。彼を背負ってここまで連れてくることもできないし。
奈津子は天を仰いで長いため息をつき、頭が蛇口にぶつかりそうになった。胸の傷が引っ張られ、痛みで息を呑んだが、その瞬間、閃いたように良いアイデアが浮かんだ。
和利は唇に触れる冷たい水を貪るように吸い込んでいた。
これで何回目だろう?
毎回短い時間で、間隔も長かったが、その水は甘美で、彼の夢さえも甘美なものにした。彼は奈津子の夢を見た。奈津子の唇にキスをする夢。清らかで甘く、優しく柔らかな。
体中が痛みに覆われ、頭が爆発しそうなほど痛かったが、それでもその痛みの縁に寄り添う美しさに執着していた。