水を十分飲んだ後、奈津子は蛇口の横にもたれかかって考えていた。容器がないのに、どうやって和利に水を飲ませればいいのだろう?
和利の怪我の具合からすると、きっと自分と同じように歩けないだろう。彼を背負ってここまで連れてくることもできないし。
奈津子は天を仰いで長いため息をつき、頭が蛇口にぶつかりそうになった。胸の傷が引っ張られ、痛みで息を呑んだが、その瞬間、閃いたように良いアイデアが浮かんだ。
和利は唇に触れる冷たい水を貪るように吸い込んでいた。
これで何回目だろう?
毎回短い時間で、間隔も長かったが、その水は甘美で、彼の夢さえも甘美なものにした。彼は奈津子の夢を見た。奈津子の唇にキスをする夢。清らかで甘く、優しく柔らかな。
体中が痛みに覆われ、頭が爆発しそうなほど痛かったが、それでもその痛みの縁に寄り添う美しさに執着していた。
水がなくなり、和利はまだ物足りなさを感じていた。
耳元で奈津子の息遣いと小さな呟きが聞こえた。「和利さん、もう這えないの。少し休ませて、少し休ませて。」
和利は目を開け、奈津子が自分の傍らで小さく丸くなっているのがぼんやりと見えた。
動かせる左手を伸ばして彼女を引き寄せた。「奈津子、寒いんだ。少し寄り添わせて。」
奈津子はそれを聞くと、すぐに起き上がって彼の頭を抱え、少し持ち上げて自分の体に寄りかからせ、そして自分は壁にもたれかかった。
彼には奈津子の荒い息遣いが聞こえていた。
手を伸ばして彼女に触れ、その手を握った。「奈津子、どこを怪我したんだ?」
「——足、左足が、たぶん、骨折してる。それに肋骨も、それから、腕も。」奈津子は静かに答えた。
和利は黙り込んだ。
「和利さん、私たち、ここで死んじゃうのかな?」奈津子は疲れ果てていた。
「そんなことは——!」和利の言葉は口から飛び出しそうになったが、必死でその二文字を飲み込んだ。それで咳き込んでしまった。
奈津子は気を取り直して彼の胸をさすったが、和利は「あいたっ」と声を上げた。
奈津子はすぐに手を離し、苦笑いした。「あなたも肋骨を怪我してるみたいね。」
和利は静かに息を整え、痛みを抑えようと努めた。
「奈津子、僕と一緒に死んでもいい?」和利は静かに尋ねた。