二見奈津子は彼女の視線を避けながら尋ねた。「私たち、訳の分からない事故に遭って、誘拐されたみたいなんだけど、犯人の姿は見えなかったわ。警察には通報したの?」
向井輝は表情を引き締めて答えた。「事故が起きた時、和利さんは長谷川透さんに電話をかけていて、長谷川さんは電話越しに衝突音を聞いたんです。すぐに佐々木光さんに連絡して、佐々木光の人たちが現場に駆けつけた時には、犯人たちはあなたたちを連れ去った後でした。裏道を使われていて監視カメラも少なかったので、捜索に手間取ってしまい、あなたたちを苦しめることになってしまって...」
二見奈津子はそれを聞いてようやく安心したように言った。「もう怖かった。あんな場所で死ぬかと思った」
田中弥生は心配そうに言った。「縁起でもない!そんなこと言っちゃダメよ!あなたたちは死の淵から生還したのよ。きっと大きな福が待っているわ。明日にでも占い師さんに見てもらって、家から車、オフィスの方位まで、しっかり見てもらいましょう!」
二見奈津子は笑って言った。「おばあちゃん、占い師さんに会ったら、愛っていう脚本家がいて、すごく占いが好きだって伝えてあげて。占い師さんと相談して脚本書いてもらったらどう?」
田中弥生は彼女を睨みつけた。「あなたは絶対に健康でいなきゃダメよ!分かった?お母さんが私に借りがあるんだから、あなたがその分返さなきゃいけないのよ!」
そう言いながら、田中弥生の目が赤くなった。
二見奈津子は点滴をしていない方の手で田中弥生の腕を抱きしめた。「分かったわ、おばあちゃん!おばあちゃんもおじいちゃんも長生きしてね。私とママの分、二倍お世話するから!」
田中弥生は彼女の頭を撫でながら、感慨深げだった。二見奈津子が事故に遭ったと聞いた時は雷に打たれたようで、もう少しで耐えられなくなるところだった。
坂元慶子も思わず目を潤ませた。
二見奈津子は向井輝に目配せした。
向井輝は笑顔で言った。「おばあちゃん、お母さん、もう奈津子と和利さんは大丈夫だから安心してください。お家に帰って休んでください。明日また来てくれたら、おいしいものも持ってきてね!」
田中弥生はまだ心配そうで、離れがたい様子だった。