258 目覚めず

二見奈津子は彼女の視線を避けながら尋ねた。「私たち、訳の分からない事故に遭って、誘拐されたみたいなんだけど、犯人の姿は見えなかったわ。警察には通報したの?」

向井輝は表情を引き締めて答えた。「事故が起きた時、和利さんは長谷川透さんに電話をかけていて、長谷川さんは電話越しに衝突音を聞いたんです。すぐに佐々木光さんに連絡して、佐々木光の人たちが現場に駆けつけた時には、犯人たちはあなたたちを連れ去った後でした。裏道を使われていて監視カメラも少なかったので、捜索に手間取ってしまい、あなたたちを苦しめることになってしまって...」

二見奈津子はそれを聞いてようやく安心したように言った。「もう怖かった。あんな場所で死ぬかと思った」

田中弥生は心配そうに言った。「縁起でもない!そんなこと言っちゃダメよ!あなたたちは死の淵から生還したのよ。きっと大きな福が待っているわ。明日にでも占い師さんに見てもらって、家から車、オフィスの方位まで、しっかり見てもらいましょう!」