296 方針

関口孝志は悔しそうに椅子に座り込み、苦しそうに頭を抱えた。

佐々木和利はゆっくりと歩み寄り、彼の前で立ち止まった。

「帰って、自分の生活を大切にしなさい」佐々木和利の声には抑揚がなかった。

関口孝志は顔を上げた。「君も僕を責めているんだね?」

佐々木和利は何も言わなかった。

恋愛の問題に、部外者が口を出すことはできない。

しかし兄弟として、佐々木和利は関口孝志が道を外れ、間違いを重ねていくのを見ていた。

賢い妻を娶るべきだったが、今の関口孝志にはもうその機会はない。兄弟のように親しい間柄でも、どうすることもできない。もう手遅れだ!

佐々木和利と二見奈津子は退院するとすぐにそれぞれの仕事に没頭し、病院にいた時のように朝から晩まで一緒にいることはなくなった。多くの心配事があったものの、正式に恋人同士となった。

クラウドエンターテインメントは佐々木グループとは異なり、多くの事を二見奈津子と藤原美月が直接処理しなければならず、彼女たちは皆の精神的支柱だった。

二人が相次いで事故に遭った後、田村良太郎たちは頭を抱えていた。

「二見娯楽は今、二見華子が権力を握っていて、二見和利は追い出されました。二見華子のマネージャーの谷口安子が今や実権を握っていて、ほぼすべての活動が私たちを標的にしています。私には理解できません。こんなことに意味があるのでしょうか?」藤原美月のアシスタントの道川光莉は二見奈津子に業務報告をしながら、二見氏の行為に怒りを露わにした。

二見奈津子は驚かず、笑って言った。「落ち着きなさい。彼女たちが私たちを標的にしたいなら、当然持ち上げて貶める方法を使うでしょう。でも私たちが貶められても、それは彼女たちが無償で宣伝してくれているようなものよ!少なくとも私たちは常に大衆の目に触れていて、忘れられることはないわ」

こんな風に自分を慰めるなんて?道川光莉は目を丸くして自分の上司を見つめた。

二見奈津子は彼女をからかうのをやめた。「いいわ、彼女たちは彼女たちのやり方でやればいい。私たちは意地の張り合いで戦う必要はないわ。慌てて応戦すれば損失が大きくなるだけよ。晴子さんが前にアーティストの特集インタビューを慎重に選びたいと言っていたけど、準備はどうなっている?」