296 方針

関口孝志は悔しそうに椅子に座り込み、苦しそうに頭を抱えた。

佐々木和利はゆっくりと歩み寄り、彼の前で立ち止まった。

「帰って、自分の生活を大切にしなさい」佐々木和利の声には抑揚がなかった。

関口孝志は顔を上げた。「君も僕を責めているんだね?」

佐々木和利は何も言わなかった。

恋愛の問題に、部外者が口を出すことはできない。

しかし兄弟として、佐々木和利は関口孝志が道を外れ、間違いを重ねていくのを見ていた。

賢い妻を娶るべきだったが、今の関口孝志にはもうその機会はない。兄弟のように親しい間柄でも、どうすることもできない。もう手遅れだ!

佐々木和利と二見奈津子は退院するとすぐにそれぞれの仕事に没頭し、病院にいた時のように朝から晩まで一緒にいることはなくなった。多くの心配事があったものの、正式に恋人同士となった。