道川光莉はすぐに元気を取り戻し、立ち上がって行こうとした。
二見奈津子は彼女を呼び止めた。「道川さん、私はプライベートな生活を追いかけるような、中身のない特集は要らないわ。質の高いドキュメンタリーが欲しいの。視聴者は彼らに疑問を持つかもしれないけど、私たちの作品を通して彼らを理解し、さらには彼らになれるくらいのものを!」
道川光莉は興奮して応えた。「はい!部長!分かりました!」
二見奈津子は椅子の背もたれに寄りかかり、軽くため息をついた。大衆に迎合するのは長続きしないはず。二見華子は近視眼的すぎる、二見氏はきっと彼女の手で早晩潰れてしまうだろう。
でもそれは二見和利の問題だ、どうしようもない!
二見華子は助手の美幸が持ってきたデータレポートを嬉しそうに見ていた。
「素晴らしいわ!これで二見奈津子を追い抜けるわ!」二見華子は興奮して谷口安子に言った。
谷口安子は躊躇いながら、眉をひそめて言った。「このやり方では中長期的な利益は得られないでしょう。」
二見華子は気にしない様子で「あなたの言いたいことは分かるわ。でも、これらの新人が出世する最良の方法は知名度を上げることでしょう?私たちが彼らをアイドルに仕立て上げれば、より多くの注目とファンを集められる。そのデータを収益化すれば、ドラマや映画を作るよりも早く儲かるじゃない?」
谷口安子は黙っていた。
二見華子は傲慢に言った。「見てよ、大手の映像会社も今はみんなこうしているわ。私たちのような小規模な会社は、後についていってお零れにあずかれば十分よ。名誉も利益も手に入るじゃない?何が悪いの?」
谷口安子は適当に「うん」と返事をし、話題を変えた。「橋本さんのイベントの準備は整いました。確かな情報によると、今回橋本拓海が実家に顔を出すそうです。このチャンスを逃さないようにしてください。」
二見華子は自信満々に言った。「安心して。橋本さんは今では私のことが気に入ってくれているわ。むしろ二人の伯母よりも私の方が好きみたいよ。」
谷口安子は思わずほっとした。二見華子が橋本家と繋がりさえすれば、それに越したことはない。もうこんな些細な知名度や露出度に汲々とする必要もなくなる。
その時、橋本家では、近藤真琴が分厚い写真の束を持って、葵叔母さんと一緒に細かく吟味し、あれこれ品定めをしていた。