「私は幽霊よ!幽霊でいいでしょう?」橋本拓海は驚いて飛び上がった。
「母さん、毎日何を考えているの?私が何でカミングアウトする必要があるの?井上邦夫だって彼女が、いや、婚約者がいるのに。よくそんなことを思いつくわね。ああ、もう!」橋本拓海は泣きたい気持ちを抑えた。
近藤真琴は目を見開いて「へえ、井上邦夫に彼女がいて、婚約者がいるって知ってたの?」
橋本拓海は話に乗って「もちろん、あの情熱的なラブレターは私が書いたんだから——」
橋本拓海は自分の舌を噛みたい気持ちだった。自慢の作品が、彼の自慢げな態度を引き出してしまった。
案の定、近藤真琴はソファークッションを投げつけながら怒鳴った。「それなのに一人でいられる顔があるの?実家に帰ってくる顔があるの?私の顔を丸つぶれにしたわね!」