二見華子は橋本家から意気揚々と出てきて、会社に戻るとすぐにソファーに倒れ込んだ。
谷口安子は深刻な表情で近づいてきて、二見華子が自慢を始める前に口を開いた。「佐藤家で問題が起きたわ」
二見華子は驚いて「佐藤家で問題?どんな問題?」
谷口安子は声を潜めて「内部情報によると、佐藤家が大金を使って炎上を抑え込んだそうよ」
二見華子はほっとして「ああ、それは普通のことじゃない?大したことないと思ったわ」
谷口安子は首を振った「いいえ、きっと普通の問題じゃないわ。今すぐ様子を見に行くべきよ」
二見華子は気が進まない様子で「問題が起きたなら、近づかない方がいいんじゃない?私の立場は大切なのよ。彼らの問題に関わりたくないわ」
「だめよ!立場を守るためにこそ、今は佐藤家に問題が起きてはいけないの!今は慎重に行動しなければならないわ!今は多くの人があなたを疑問視していて、佐藤家の人々さえもあなたを眼中に入れていないけど、もし佐藤家でスキャンダルが起きたら、必ずあなたにも影響が及ぶわ!分かる?」谷口安子は二見華子に利害関係を分析した。
二見華子は思わず苛立って「本当にうんざりだわ!うんざり!」
王冠を戴こうとする者は、その重みを背負わねばならないのだ!
佐藤家の力を借りようとするなら、佐藤家の責任も担わなければならない。これは仕方のないことだった。
谷口安子は二見華子が理解したのを見て、「今日の橋本家での話はうまくいった?」と尋ねた。
二見華子は良い気分を台無しにされ、不機嫌そうに「橋本拓海の注目を引いて、企画書を渡したわ」
二見華子は息を吐いて「彼の態度は良くもなく悪くもなく、どちらかというと距離を置いているような感じだったわ。きっと二見奈津子のあの小娘のせいよ。彼は佐々木和利の親友だから、二見奈津子が私の悪口を言いふらしているに違いないわ!」
二見華子は二見奈津子のことを思い出すと歯ぎしりした。
谷口安子は「橋本拓海が企画書を受け取ってくれたなら問題ないわ。彼はビジネスマンよ。利益を重視しないビジネスマンなんていないわ。素晴らしい将来性と巨大な利益の前では、心動かされない商人はいないわ。私たちはゆっくりと釣りをして、ゆっくりと糸を巻けばいいの。あなたは橋本拓海に集中すべきよ。だからこそ、佐藤家に悪い噂が立つのは避けなければならないわ」