「おばあちゃん、ちょっと面倒なお願いがあるの」二見奈津子は申し訳なさそうに言った。
田中弥生は気にせず答えた。「大丈夫よ。おばあちゃんはこの年まで色んな面倒事を見てきたわ。言ってごらん」
二見奈津子は車の中で不安そうに彼女を見つめている若木花子を一瞥し、事情を田中弥生に話した。
二見奈津子が黙って運転する中、若木花子は佐藤翔の姉に騙されて別荘に数ヶ月監禁されていた経緯を詳しく話した。
「私が悪かったんです。この子を使って玉の輿に乗れると思ったんですけど、まさか金持ちの人たちがこんなに冷酷で、子どもだけ取って母親を殺そうとするなんて」若木花子は深く傷ついた様子で言った。
「佐藤翔とはどうやって知り合ったの?」二見奈津子が突然尋ねた。
若木花子は一瞬戸惑い、視線を車外に向けた。「私がレストランでウェイトレスをしていた時、佐藤翔さんが友達とよく食事に来ていて、そのうち親しくなって...彼は私に優しくしてくれて、高級ホテルに連れて行ってくれたり、服を買ってくれたり、お小遣いをくれたり。給料より多かったんです。私は運命の人に出会えたと思って、私が一番大切な人だと思っていたのに...」
彼女の声は次第に小さくなっていった。
二見奈津子はため息をつきながら「だから、佐藤翔と佐々木理恵のことを知って、佐々木理恵に会いに行ったの?」
「はい、私は佐藤翔さんが大好きで、彼なしでは生きていけない。彼がいなくなったら、また昔の生活に戻ってしまう。でも佐々木さんは違う。もともとお金持ちだから、佐藤翔さんじゃなくてもいいはずなのに」若木花子は言った。
「佐藤翔と佐々木理恵が恋人になりそうだってことは、どうやって知ったの?」二見奈津子は尋ねた。
若木花子は黙り込んだ。
二見奈津子は続けた。「実はその時、二人は付き合ってなかったのよ。ただ両家の親が望んでいただけで、佐々木理恵も佐藤翔も互いに特別な感情はなかった。恋人同士じゃなかったの」
若木花子は驚いて「本当ですか?」と聞いた。