320 自薦

佐々木理恵は思わず笑い出した。「道川さんが、あなたの唇は蜂に刺されたみたいだって言うのも分かるわ」

橋本拓海は顔を曇らせた。「蜂に刺された?それはどういう形容?あの小さなライオンがあんなに繊細な文章を書けるのに、なんでこんなに空気が読めない言い方するの?」

佐々木理恵は腰を折って笑った。「あなたが彼女を小さなライオンって呼ぶのも、同じようなものじゃない?」

橋本拓海は「彼女の同僚も小さなライオンって呼んでるって言ってたわ!」

佐々木理恵は笑いすぎて息が切れそうだった。「そんなことないわよ!あなただけがそう呼んで、しかも直接面と向かって、しかも思わず口に出しちゃって。相手はあなたが引っ込みがつかなくなるのを避けるために、そう言ってくれただけよ!」

「私は―」橋本拓海は喉に魚の骨が刺さったような表情で、不機嫌そうな顔をした。