349 甘い

「今日、父が私に付き添って洋服を選びに行きたがって、次から次へとスーツを選んでいたの。おじいちゃんは途中から来て、私たちが呼ばなかったことに怒ったふりをしていたわ。今では長谷川透まで買収されて、仕事の予定をできるだけ減らしてくれているの」

「私は今日、母が用意してくれた刺繍品を安藤さんに渡して、晴子さんにも同じように用意するように伝えたの。安藤さんの目が輝いていたわ。長谷川透だけじゃなく、今では祖父母まで彼らに取り込まれちゃって、世界中で私たち二人だけが蚊帳の外...って彼らは思ってるのよ!」

二人は笑い合った。主役でありながら傍観者でもあるという新鮮な感覚が、とても面白かった。

「お兄さんと向井輝に知らせたかしら。向井輝はまた国際金賞を取ったのよ。本当にすごいわ。私たちの結婚式に帰ってきて、みんなと一緒に騒いでくれるかしら」

「きっと来てくれるわ。お兄さんの任務は機密レベルだから、期待はできないけど。最近、私たちを密かに守ってくれている人が多いわ。きっと今回の任務も簡単なものじゃないのね。彼は命を懸けて戦っているのよ。そんな時はいつも心配で、家族には言えないの」佐々木和利は申し訳なさそうに二見奈津子の肩を叩いた。

「時々思うの。私たちがこんなに平和に暮らせているのは、お兄さんのような人が命を懸けて守ってくれているからよね。大丈夫、私は分かっているわ。向井輝が帰ってくれば十分よ。私たちは彼女と一緒に過ごせるもの。彼女は一人で苦労しているから、私たちが優しくすることで、お兄さんの分も少し埋め合わせができるわ」と二見奈津子は言った。

佐々木和利は彼女にキスをして、軽くため息をついた。「こんな素晴らしい妻を持って、これ以上何を望めようか。神様が私に与えすぎたと思って、何かを取り上げたり、もっと試練を与えたりするんじゃないかと心配だよ」

二見奈津子は彼を睨んで、怒ったように言った。「まあ!なんてことを言うの!幸せすぎると感じるなら、他人を助けたり、善行を積んだりして、神様の恵みを広めればいいじゃない。あなたったら!」

佐々木和利は笑いながら二見奈津子を抱きしめた。「はいはい!その通りだよ。君の言う通りにするよ!男の最大の幸せは良い妻を娶ることだ!妻の言うことを聞くのは、良い夫の基本だからね!」