二見奈津子は軽く首を振った。「私は見て分かったわけじゃないの。感覚なの。向井さんならわかるでしょう?顔を見なくても、一目でその人が自分の夫かどうかわかる、あの感覚」
向井輝は佐々木光を見つめながら、頷いた。「そうね。あなたたちの小隊は5人で、体格も似ているのに、私は一目であなたを見つけられる。これが女の直感よ」
佐々木光は向井輝を愛おしそうに見つめ、微笑んだ。「あなたたちは直感で片付けるけど、私たちは何か間違いを起こさないかとヒヤヒヤしていたんだよ」
二見奈津子は心配そうに言った。「双子じゃないんだから、知らない人なら騙せるかもしれないけど、普段から一緒にいる人には、すぐにばれちゃうんじゃないかしら」
佐々木光は真剣な表情で言った。「以前、思いつきで佐々木和利に私の服を着せて行かせたことがあるんだ。上官も遠くからは疑わなかったよ」
「彼は私の生活にも詳しいし、すぐには問題ないはずだ。それに部隊全員が彼を守っているし、短期間なら大丈夫だろう。内通者を捕まえることは急務だ。一発で決めないと、全体が混乱してしまう」
「今回、誰かが私の怪我に乗じて何かを企んでいる。内通者を徹底的に調査して、正体を突き止めるまでは、私は倒れるわけにはいかない。だからこんな策を取ったんだ」
二見奈津子は頷いた。「佐々木和利さんは先ほどまであなたの役に立てないって嘆いていたけど、今こそチャンスね。きっと上手くやってくれるわ」
この言葉は、自分に言い聞かせるようなものだった。誰であれ、この状況では彼女のように心配になるはずだ。結局のところ、これは命がけの仕事なのだから。
向井輝は小声で林千代が見舞いに来たことを話し、それから「私、戻らないと。もっと疑われちゃうわ。奈津子さん、光のことをお願いね。ごめんね、面倒をかけて」と言った。
二見奈津子は頷いた。「私も和利さんのことをお願いします。私たち、あなたたちの帰りを待ってます!私たちの結婚式に来てくださいね!」
向井輝は微笑みながら頷いたが、それでも涙が止まらなかった。
佐々木光は彼女の頭を撫でた。「バカだな!泣くなよ。大丈夫だって!元気だから!」
向井輝は鼻をすすった。「帰るわ!言うこと聞いて、早く良くなってね!」
佐々木光は彼女の髪を軽く引っ張った。「わかってるって!うるさいな!」