二見奈津子は再び深々とお辞儀をして感謝の意を示した。
「なぜ私が代理を務めることは佐々木グループに影響がないのに、こんな事態になってしまったのでしょうか?」
「皆様もご覧の通り、佐々木グループの現状は、株価の乱高下から、先ほどの意味不明な妨害まで、私が言わなくても分かると思います。佐々木グループは見えない黒い手の標的になっているのです。」
「私がここに立っているのは、佐々木家と佐々木グループを代表して宣言するためです。私たちは誰に対しても頭を下げません!どんな妖怪や悪魔が現れようとも、私たちは決して妥協も降伏もしません!皆様のご支援とお力添えをお願いいたします!」
大きな拍手が沸き起こった。
今回はメディアの記者だけでなく、外側で様子を見ていた株主たちも拍手を送った。
さすがは女傑だ、佐々木敬が彼女を信頼するのも当然だと。
さすがは佐々木家だ。危機的状況でも責任を持って、彼らについてきた人々を全て守る姿勢を見せた。株主たちは密かに安堵した。手持ちの株を売らなかったことを。このような佐々木家は、代々追随する価値があるのだと。
佐々木家。
田中弥生と坂元慶子はテレビを見ながら、揃って安堵のため息をついた。
佐々木宗は笑いながら言った。「心配ないって言っただろう?うちの奈津子は凄いんだ!こんな場面なんて朝飯前さ!」
坂元慶子は不満げに言った。「お父さん!奈津子だってやっぱり女の子なのよ。こんな重荷を背負わせて、今回は彼女のことを心配してないんですか?」
田中弥生は坂元慶子にみかんを一つ手渡しながら、笑って言った。「佐々木老会長にも深い考えがあるのよ。奈津子を前面に出さなければ、暗闇に潜む妖怪たちも手を出してこないでしょう?あなたのお父様と佐々木敬が事業を管理できなくなったと確信して初めて、彼らは本格的に動き出すのよ。」
佐々木宗は何度もうなずいた。「そうそう、私は今や孫の事件で怒りのあまり倒れた老いぼれじじいってことさ。」
そう言って大笑いした。
田中弥生と坂元慶子は顔を見合わせて笑った。
坂元慶子はため息をつきながら言った。「道理は分かっているんです。ただ、子供たちが苦労するのを見るのが辛いんです。」