363 失踪

向井輝が消えた。

向井輝は病院を出た後、部隊に戻って佐々木和利と合流するはずだったが、戻らなかった。

佐々木和利は向井輝が佐々木光と一緒にいたいのだろうと思い、注意力が集中しすぎていてこの件に気付かなかった。二見奈津子は、向井輝が戻った後は佐々木和利と一緒にあちらの件に対処していると思い、連絡を取らなかった。

佐々木光は二度目の手術を受け、半昏睡状態にあり、全員の安全のため、向井輝との単独連絡は既に取っていなかった。

二見奈津子と佐々木和利がこの問題に気付いた時には、向井輝の失踪から既に48時間が経過していた。

二見奈津子は目の前が暗くなり、慌てて机を掴んだ。

「大丈夫ですか?」長谷川透が心配そうに尋ねた。

二見奈津子は首を振り、椅子に腰掛け、目を閉じて冷静さを取り戻そうとした。佐々木和利との暗号化された通信チャンネルはまだ開いていた。