367 対決

丹野環奈は唇を固く結んで、口元に運ばれた食べ物を拒んでいた。

林千代は軽く笑って、スプーンを引っ込め、お椀も置いた。「食べたくないんですね？なら、無理強いはしませんよ。分かっているでしょう？あなたが良くなることを望んでいない人は、私以上にいないんですから」

林千代は近寄って声を潜めた。「このままでいてくれれば一番いいんです。私があなたの世話をして、私の孝行者としての評判は、ますます上がっていく。あなたは私の恩人、一生の恩人なんですよ！」

林千代は背筋を伸ばし、満面の笑みを浮かべた。

丹野環奈は目を丸くして、口を開けたまま「ハーッシーハーッシー」という音を出していた。

林千代は声を出して笑い、その笑い声はどんどん大きくなり、腰を曲げて笑った。丹野環奈が苦しそうにもがく様子を見て、心の中で無上の喜びを感じていた。

ドアがノックされ、外から開いた。

林千代は顔の笑みを隠しきれないまま、振り向いた。

二見奈津子は怒りに満ちた丹野環奈を一瞥して笑った。「やあ、何がそんなに嬉しいの？鈴木さんの容態が良くなったの？」

林千代は髪をかきあげ、薄く笑みを浮かべながら、落ち着いて言った。「ええ、母は今日の調子がいいんです。今、食事を勧めているところでした」

「ふーん、本当に孝行者ね」二見奈津子は彼女の傍を通り過ぎ、丹野環奈のベッドの前に来た。

丹野環奈は目の前の二見奈津子を見つめ、その眼差しが変わった。もはや険しさはなく、むしろ哀願するような様子だった。二見奈津子は心が動いたが、見間違いだと思った。

林千代は二人の間に立ちはだかり、横に手を伸ばした。「奈津子さん、母も疲れているので、少し休ませてあげましょう。こちらで話しましょう」

二見奈津子は丹野環奈に微笑みかけて言った。「お見舞いに来ました。必ず良くなってくださいね。でないと、林千代さんが家を仕切ることになりますよ。お嫁さんのことを心配なさらないとしても、息子さんのことは心配でしょう？鈴木家を二人に任せて、安心できますか？」

林千代は二見奈津子を見つめ、目に笑みが届かないまま言った。「あなたのお姑さんは二見家をあなたに任せたじゃないですか。私じゃなぜいけないんです？」

二見奈津子は笑って言った。「あなたと私を同じに扱えるわけないでしょう？」

林千代の表情が変わり、二見奈津子を良からぬ目で見た。