佐々木光が向井輝と結婚した年は、ただの時間の節目に過ぎないと長谷川透はそう表現したが、それは単に印象を深めるためだけだった。しかし、佐々木和利の心は、理由もなく一瞬ときめいた。
彼は向井輝の災難を思い出さずにはいられなかった。
もし向井輝が誘拐されたのなら、彼らは一度も誘拐犯からの電話を受けていない。
もし向井輝が兄の因果で報復されたのなら、今に至るまで、兄の敵の誰一人としてこの件を認めていない。
理屈から言えば、向井輝が今も目覚めないのなら、兄の敵であれば、この件を利用して挑発してこないはずがない。
ある感覚が佐々木和利の心の底から湧き上がってきたが、あまりにも曖昧すぎて、すぐには掴めなかった。
長谷川透は続けた:「ブルーシールドの登記地はオマーン諸島にあります。あちらの状況を追跡しても意味がありません。全て偽物です。我々は今、ブルーシールドについて何も知らないと言えます。彼らは約10年の時間をかけて布石を打ってきました。和利さん、今回我々が直面している相手は、これまでのどの相手とも異なります。」