390 甘い恋

佐々木光が向井輝と結婚した年は、ただの時間の節目に過ぎないと長谷川透はそう表現したが、それは単に印象を深めるためだけだった。しかし、佐々木和利の心は、理由もなく一瞬ときめいた。

彼は向井輝の災難を思い出さずにはいられなかった。

もし向井輝が誘拐されたのなら、彼らは一度も誘拐犯からの電話を受けていない。

もし向井輝が兄の因果で報復されたのなら、今に至るまで、兄の敵の誰一人としてこの件を認めていない。

理屈から言えば、向井輝が今も目覚めないのなら、兄の敵であれば、この件を利用して挑発してこないはずがない。

ある感覚が佐々木和利の心の底から湧き上がってきたが、あまりにも曖昧すぎて、すぐには掴めなかった。

長谷川透は続けた:「ブルーシールドの登記地はオマーン諸島にあります。あちらの状況を追跡しても意味がありません。全て偽物です。我々は今、ブルーシールドについて何も知らないと言えます。彼らは約10年の時間をかけて布石を打ってきました。和利さん、今回我々が直面している相手は、これまでのどの相手とも異なります。」

「四大名家に手を出さないのは、我々が団結しているからなのか?それとも一度に呑み込もうとしているからなのか?」佐々木和利は独り言のように言った。

長谷川透は軽く首を振り、何も言わなかった。

佐々木和利は苦笑した:「林千代が我々の攻守一体の隙を作ったんだな?」

長谷川透の頷きを見るまでもなく、佐々木和利は軽くため息をついた:「今や関口氏は関口孝志の手にあり、鈴木家の兄弟は数年前から既にそれぞれ独自の道を歩んでいる。関口氏は最適な突破口だ。関口孝志は今、誰の意見も聞き入れない、情に囚われている。」

長谷川透は冷静に尋ねた:「では我々は見捨てるのか、それとも守るのか?」

佐々木和利は彼を一瞥した:「守る以外に選択肢はない。関口孝志は関口孝志、関口氏は関口氏だ。」

「しかし、関口氏に問題があると分かっていながら、どうやって連携できるのですか?関口孝志は我々の言うことを聞きません。」長谷川透は思わず心配した。

佐々木和利はファイルを閉じ、指でファイルを軽く叩いた:「つまり、我々は今、表に立っていて、相手は闇の中にいるということだ。恐らく我々の一挙手一投足が相手の目に入っている。今回の私と兄の件も、彼らと無関係ではないだろう。」