二見華子は大きな幸せに包まれ、一晩中ほとんど眠れなかった。
幸せがあまりにも突然訪れ、喜びと不安が入り混じっていた。
彼女の幸運の神は確かに佐々木和利だった。以前の機転の利いた判断に感謝していた。もし佐々木和利のために隠れ蓑になるという決断をしていなければ、彼からの好意も得られなかっただろう。
佐々木和利の承認を得たことで、佐々木理恵というライオン姫も態度を軟化させ、ドキュメンタリーの撮影に参加させてくれた。しかも緊急で追加撮影を行い、石井菜菜子たちよりも先に撮影を終えることができた。脚本も藤原美月と道川光莉が急いで完成させたものだった。このような待遇は、二見華子以外には誰も得られないだろう。
二見奈津子は始終何も言わなかった。
彼女に何が言えるというのだろう?
今この時、彼女はおそらく佐々木和利をなだめることに全神経を集中しているのだろう?
二人の間に亀裂が入ったことを考えると、二見華子は思わず飛び上がって踊りだしたくなるほど嬉しかった。
それだけではない、予想外の収穫もあった。
久しぶりに二見和利も来た。この期間に彼も考えを改め、彼女の実力を認め、ついに彼女に近づき、取り入ろうとしているのだろう。
正直なところ、二見和利に対しては多少の感情があった。この兄は幼い頃からお人好しで、言いなりになるタイプだった。佐藤家の誰一人として彼女を眼中に入れていなかったのに比べ、二見和利という兄の存在は、彼女にとって非常に心温まるものだった。
側に従順な手先を置いておくことは、実に気分の良いものだった。
布団の中で携帯が無音で振動し、長い間鳴り続けていたが、歓喜に浸っていた二見華子はようやくそれに気付いた。
携帯を手に取ると、谷口安子からだった。
「もしもし、谷口さん、どうしてこんな早くに電話をかけてくるの?」二見華子は窓の外を見やると、空がようやく白み始めていた。
谷口安子の声は火がついたように焦っていた:「華子さん、こんな大きな出来事なのに、どうして事前に私たちに一言も言わなかったの?こんな状態で、どうやって宣伝すればいいの?どうやって対応すればいいの?」