青木大輔の驚いた目の下で、二見奈津子は病室に入った。
老人は喜びを抑えきれなかった。
二見奈津子は老人をベッドに寄り添って:「おじいちゃん、早く横になって、看護師さんに血圧を測ってもらいましょうか?」
老人は素直に横になり、血圧計を持った看護師が手際よく近づいて、老人の血圧を測り、そして二つの白い錠剤を二見奈津子の手のひらに置いた。
二見奈津子は意を汲んで、コップの水を用意し、老人の血圧測定が終わるのを待って、薬を飲ませた。
老人は二見奈津子の手を握って横になり、満足げに:「少し寝るから、目が覚めたら美味しいものを食べに行こう。」
二見奈津子は笑顔で承諾し、老人に手を握られたままにしていた。
薬は睡眠薬のようで、老人はすぐに寝入り、呼吸は規則正しくなった。
傍らの若い看護師は嬉しそうにほっとため息をついた:「佐々木さんのおかげです。今日は老人が少し荒れていて、誰が宥めても効果がなかったんです。ありがとうございます。」
同じ階にいるため、若い看護師と二見奈津子は顔見知りだった。
二見奈津子は握られていた手首をそっと抜き、笑って言った:「どういたしまして。」
彼女は青木大輔に微笑んで、外に向かった。
青木大輔は彼女の後を追った:「奈津子さん、本当にありがとうございます!もう、感謝の言葉も見つかりません。今日は本当に偶然でした。あなたは私たち家族の幸運の女神です——」
青木大輔は少し取り乱していた。
二見奈津子は振り返って、笑いながら言った:「青木さん、些細なことですから、気にしないでください。たまたま通りかかっただけです。他の人でも同じようにしたと思います。用事がありますので、失礼します。」
青木大輔の二見奈津子を見る目には、優しさが溢れており、二見奈津子は少し居心地が悪くなった。エレベーターホールに着いても、まだ青木大輔の視線を感じることができた。
二見奈津子の背中にかすかな寒気が走った。
丹野環奈は懸命に上半身を持ち上げ、肘で体を支え、手を伸ばして点滴チューブの栓を締めた。誰もいないこの時間を利用して、動かせる体の部分を鍛えようとしていた。看護師が来たら、また点滴チューブを緩めて、睡眠薬入りの薬液を体内に入れることにしていた。