佐々木和利は気のない様子で答えた。「いいよ、付き合ってあげる。暴走されても困るしね」
二見華子はそれを聞いて、すぐに顔を輝かせた。「じゃあ、一緒に行きましょう」
彼女は佐々木和利の車椅子を押そうとしたが、佐々木理恵にさりげなく阻止された。
二見和利は彼女の後を追いかけ、肩を抱きながら優しく叩いた。「僕も一緒に行くよ」
二見華子は心が温かくなった。
佐々木理恵は二見和利に微笑んで言った。「二見さんは華子さんにとても優しいですね」
二見和利は笑うだけで何も言わなかった。
二見華子はいつものように恥ずかしそうに俯いた。
二見華子は、佐々木家の一端を垣間見ることができる喜びに浸っていて、自分が仕掛けた罠の中にいることにまったく気付いていなかった。
「佐藤美咲をこの世から消したい」林千代は冷たく言った。
青木大輔は彼女を見つめながら、ゆっくりと温かな笑みを浮かべた。「関口啓一のお婆さんのような優しい方が、そんな残酷な言葉を口にするなんて。佐藤美咲さんは、あなたが許せないことをしたに違いありませんね」
林千代は冷たい表情のまま黙っていた。
二人は病院の廊下に立っていた。廊下の突き当たりには向井輝の病室があり、誰も近づけない状態だった。
青木大輔はその方向を遠くから見つめながら、淡々と言った。「一人の女が消えても、また別の女が現れる。関口啓一のお婆さん、あなたはずっとこんな方法で夫婦の障害を取り除くつもりですか?」
林千代の目に薄い霧が浮かんだ。
青木大輔は軽くため息をついた。「あなたは関口家のためにこれほど尽くしているのに、関口孝志はこんな仕打ちをする。彼を残しておく意味があるのでしょうか?」
林千代は体を震わせた。「何をするつもり?彼に手を出さないで!」
青木大輔は笑った。「まだ彼を愛しているんですね。心配しないで、彼には手を出しません。私たちは協力関係です。あなたが大切にする人は、私も大切にします。ただ、彼に価値がないなら、無駄に居座らせる必要はないと言っているだけです。どうせ、あなたのお腹にはもう後継者がいるんですから、何を恐れることがありますか?」
青木大輔の視線は林千代の腹部を一瞥した。
林千代は無意識に手を腹部に当てた。