この言葉は、最も効果的なプラセボだった。
関口孝志はようやく素直に若木の車に乗り込み、グループ本社へと直行した。
この家には、林千代がいれば、すべてが順調に進む。
「俺は会社を売る書類にサインなんかしていない。きっと彼女たちの罠にはまったんだ!若木!絶対に佐藤美咲のあの売女がやったことだ、きっと俺が酔っぱらっているときに騙してサインさせたんだ!」関口孝志の頭はようやく本題に戻った。
若木は黙っていた。
彼は関口孝志のサインを直接見たことがあった。流暢なサインで、意識がはっきりしていない状態でサインしたものではあり得なかった。
しかし、彼は信じていた。彼の社長は確かに誰かに騙されたのだと。
ただ、その人物の騙し方があまりにも巧妙で、彼の社長は今になっても一体いつサインしたのか分からないでいる。彼は胸ばかり大きくて頭の悪い佐藤美咲にそんな能力があるとは思えなかった。