443 傷心

理恵は自分から数歩離れた青木大輔を見つめ、軽く微笑み、瞳に涙が光った。

「理恵、君は本当に美しい!」青木大輔は心から言った。

理恵は何も言わず、顔の微笑みも立ち振る舞いも、端正で気品があり、誰も冒涜できないほどだった。

青木大輔はゆっくりと二歩前に進み、理恵も同じように二歩後ろに下がった。

二人は大広間の中にいながらも、人混みから遠く離れ、喧騒の中で世間から隔絶されていた。

青木大輔は一瞬怯み、立ち止まった。

理恵は笑いながら、うっかり流れ落ちた涙を手で拭い、視線をそらした。

青木大輔は心配そうな目で「どうしたの?」と尋ねた。

理恵は微笑んで「何でもないわ、自分が騙されていたことに気づいて、少し悲しくなっただけ。今日は次兄と義姉の晴れの日だから、私が水を差すべきじゃないわ」と答えた。

「理恵、君は僕が出会った中で最も美しく純粋な女性だ。もし誰かが君の心を傷つけたなら、それは故意ではないか、あるいは何か事情があるんだろう。彼に機会を与えるべきだよ。せめて彼に真相を知らせてあげるべきじゃないかな?」青木大輔の口調はいつものように優しかった。

理恵の拒絶的な態度に青木大輔は内心「まずい」と思い、これまでの出来事を黙って振り返り、隙がないことを確認してから、思わず背筋を伸ばした。

理恵は目の前の、初めて心を動かされた男を見つめ、辛くないと言えば自分にも嘘をつくことになるだろう。

青木大輔は理恵が怒っている理由を理解したと思い、笑いながら謝った。「今日は急な国際会議のため、残念ながら佐々木社長と二見社長の式に間に合わなかった。ごめんね!私の謝罪の気持ちとして——、埋め合わせの機会をくれないか?」

理恵は彼を見つめ、初めて会った時のことを思い出した。彼のような笑顔と謙虚さに魅了されたのだ。自分は純粋な気持ちだったのに、彼は最初から計算づくだった。

そう思うと、理恵は自然と納得した。策略にはまったとはいえ、あまり見苦しくはない負け方だった。

彼女は明るく笑った。「埋め合わせ?いいわよ。式が終わったら、私の義姉に会いに行ってくれる?」

青木大輔の笑顔が凍りつき、目が思わず細まった。