443 傷心

理恵は自分から数歩離れた青木大輔を見つめ、軽く微笑み、瞳に涙が光った。

「理恵、君は本当に美しい!」青木大輔は心から言った。

理恵は何も言わず、顔の微笑みも立ち振る舞いも、端正で気品があり、誰も冒涜できないほどだった。

青木大輔はゆっくりと二歩前に進み、理恵も同じように二歩後ろに下がった。

二人は大広間の中にいながらも、人混みから遠く離れ、喧騒の中で世間から隔絶されていた。

青木大輔は一瞬怯み、立ち止まった。

理恵は笑いながら、うっかり流れ落ちた涙を手で拭い、視線をそらした。

青木大輔は心配そうな目で「どうしたの?」と尋ねた。

理恵は微笑んで「何でもないわ、自分が騙されていたことに気づいて、少し悲しくなっただけ。今日は次兄と義姉の晴れの日だから、私が水を差すべきじゃないわ」と答えた。