453 引き取り

藤原美月は目を見開いて二見奈津子を見つめた。「誘い出す!絶対に誘い出さなきゃ!どこに誘い出せばいいと思う?」

「——青木大輔!」

佐々木理恵は窓辺の陽光の中で静かに座っている向井輝を見つめた。彼女は一枚の絵のように美しかった。佐々木光は彼女に近づき、そっとセーターを彼女の肩にかけた。

向井輝は振り向いて彼を一瞥し、素直に頭を彼の肩に預けた。

佐々木光は彼女を抱き上げ、彼女の眉間に軽くキスをした。「輝、帰ろう」

向井輝は佐々木光に抱かれるままで、まるで何も感じていないかのようだった。

佐々木理恵は傍らの看護師に小声で尋ねた。「まだ良くなる兆しはないんですか?」

看護師は軽く首を振った。

佐々木理恵はため息をついた。向井輝は兄以外の誰も受け付けず、少しの物音や些細な動きにも身を縮めて叫び声を上げるのだった。