第372章 お茶の香り

東條甘音はこの時、強引に霧島咲姫と立花心蕾を店内に引っ張り込んだ。そう、彼女は意図的に桐島詩雲を放っておいたのだ!

桐島詩雲の顔色は青ざめていた。

東條甘音は店に入ると、まるで迷子の少女が自分の家を見つけたかのように、目を輝かせて店内を見回した。

彼女がこの店を選んだのは、店主が彼女の友人だからだった。

東條甘音はしばらく品定めをしていると、赤い透かし彫りのレースドレスが彼女の目を引いた。

桐島詩雲の方が手早く、彼女より一歩先に出て、その赤いドレスを奪い取った。

「店長さん、このドレスを買います!」桐島詩雲は即座に言った。

東條甘音は心中の不快感をそのまま口にした。「自信過剰な人もいるわね。自分がハンガーラックだと思ってるの?似合うかどうかも考えずに奪うなんて?」

この時、店員が近づいてきた。「申し訳ありませんが、お客様、このドレス、試着されませんか?当店の商品は一度購入されますと、返品・交換はお受けできませんので!」

桐島詩雲は面子が立たないと感じ、「試着はいいわ、包んで!」と言った。

そこで東條甘音は彼女を遮った。「ちょっと待って、この服は私が先に目をつけたの。2倍の価格で買うわ!」

霧島咲姫はこの雰囲気があまりにも微妙で、すでに自分のコントロールできる範囲を超えていると感じ、立花心蕾を連れて別の場所で服を見ることにした。

桐島詩雲はこの時、引くわけにはいかなかった。「私は3倍出すわ!」

東條甘音は少しも譲らなかった。「10倍出すわ!」

桐島詩雲はさらに値段を釣り上げた。「50倍出すわよ!」

桐島家で最も不足していないのはお金だ!

彼女はこの大スターが、自分のような名門の娘とどう対抗するか見てみたかった。

東條甘音はこれ以上値段を上げなかった。「いいわ、成立!支払いに行きなさいよ!」

桐島詩雲は自分が弄ばれたと感じたが、先ほど強気な発言をした手前、実際に支払わないと面子が丸つぶれになると思い、渋々会計に向かった。

この時、東條甘音は店員に言った。「店長に伝えて、私に感謝するように言っておいて!」

店員はようやく理解した。彼女は店長の知り合いだったのだ。

この時、霧島咲姫と立花心蕾も戻ってきた。二人は気に入った服を見つけられなかった。