第372章 お茶の香り

東條甘音はこの時、強引に霧島咲姫と立花心蕾を店内に引っ張り込んだ。そう、彼女は意図的に桐島詩雲を放っておいたのだ!

桐島詩雲の顔色は青ざめていた。

東條甘音は店に入ると、まるで迷子の少女が自分の家を見つけたかのように、目を輝かせて店内を見回した。

彼女がこの店を選んだのは、店主が彼女の友人だからだった。

東條甘音はしばらく品定めをしていると、赤い透かし彫りのレースドレスが彼女の目を引いた。

桐島詩雲の方が手早く、彼女より一歩先に出て、その赤いドレスを奪い取った。

「店長さん、このドレスを買います!」桐島詩雲は即座に言った。

東條甘音は心中の不快感をそのまま口にした。「自信過剰な人もいるわね。自分がハンガーラックだと思ってるの?似合うかどうかも考えずに奪うなんて?」