大江瑞穂は慌てて笑いながら答えた。「ええ、ありがとうございます、遠山さん」
名刺を取りに行こうとした。
しかし夏目初美は笑いながら彼女を引き止めた。「瑞穂、外の花かごがちゃんと並べられているか見てきてくれない?」
大江瑞穂が承諾して出て行くのを見送った後、夏目は遠山陽介に向き直った。「陽介、今のところ私たちはあなたからクライアントを紹介してもらう必要はないわ。特別に私たちのためにクライアントを探してもらう必要もないの」
「私と瑞穂はこれまでにある程度の人脈を築いてきたわ。今日が正式な開業日だけど、実は既に中規模の会社と長期の法律顧問契約を結んでいるの。それに離婚案件もいくつか待っているわ。以前、彼らの知り合いの案件を担当したことがあるから、いわゆる紹介ってやつね」
「それに、成功している先輩たちはもう離婚のような小さな案件は引き受けなくなって、私たちに回してくれているの。だから陽介、あなたの好意はありがたいけど、本当に必要になったら、その時にお願いするわ」
夏目初美はバカではなかった。
そんなに簡単にクライアントが見つかるわけがない。遠山陽介が今彼女に約束しても、後でどれだけの人脈を使い、どれだけの人情を借りて彼女たちのためにクライアントを探さなければならないか分からない。
もしかしたら、工藤希耀が戻ってきたら、彼まで巻き込んで人情を借りることになるかもしれない。
二人にとっては大したことではないかもしれないが、夏目はそんな面倒を無駄にかけたくなかった。
それに、これは彼女自身の法律事務所だ。すべて自分の力でやり遂げたいと思っていた。
始まったばかりで、もう他人に頼ろうとするなんて、どういうことだろう?
そんなことでは、この道を長く歩めないし、遠くまで行けない!
遠山陽介は慌てて言った。「そんなことないですよ、お嫂さん。特別にクライアントを探すわけじゃなくて、本当に今いるんです。お嫂さんと大江さんが独立した女性で、人に頼りたくない、人情を借りたくないというのはわかります」
「でも本当にクライアントがいて、クライアントがあなたたちの専門知識を必要とし、あなたたちがクライアントの資金を必要としているなら、それはまさに双方にとって良いことじゃないですか?」