小左と奈々を見送った後、大江瑞穂はやっと冷ややかに鼻を鳴らした。「木が倒れれば猿は散るというけど、スターライトという大木はまだ倒れていないのに、従業員はもう散り始めている。倒れるのも近いんでしょうね。クズ男の報いよ!」
言い終わって夏目初美の表情が良くないのを見て、咳払いをした。「あの、初美、私がこんなこと言って不愉快になった?」
夏目初美は否定しなかった。「結局、私の何年もの心血を注いできたものだし、最初は何もないところから少しずつ作り上げてきたんだもの。こんなに早く駄目になるなんて思わなかった。確かに嬉しくはないわ。感情的には、彼らが上手くいかないこと、むしろどんどん悪くなることを願ってしまうけど」
大江瑞穂が何か言う前に、手を振って続けた。「でも古いものが去らなければ新しいものは来ない。数年後には私たちの初瑶が今のスターライト以上の規模になれば、誰がそんなの覚えているかしら?人生で何人かのクズ男に出会わないことなんてあり得ないし、一つの仕事、一つの職場で老いるなんてあり得ないでしょ?」
大江瑞穂は笑い出した。「そう考えるのが正解よ。クズ男も、クズ男の法律事務所も、遠くへ消えてしまえばいい…」
突然息を飲んだ。「あら、あそこの窓際に立っているのは遠山さんじゃない?私たちを見ているのかしら?きっと私たちが外に出ていた時間が長すぎて、彼も行くに行けず、残るに残れず、イライラしているんじゃない?」
夏目初美は急いで彼女の視線の先を見たが、見えたのは遠山陽介の後ろ姿だった。
彼女は急いで中に戻った。「陽介はきっと生まれて初めてこんな失礼な主人を見たんでしょうね。瑞穂、急いで」
二人が応接室に戻ると、遠山陽介はすでにソファに座り直していた。
夏目初美は慌てて笑った。「ごめんなさい、陽介。こんなに待たせてしまって。一緒に食事に行きましょうか?ちょうどお昼の時間だし」
大江瑞穂も笑った。「確か遠山さんは前回、魚料理がお好きでしたよね。近くに魚料理の美味しいお店があるんですよ」
しかし遠山陽介は笑いながら丁寧に断った。「いいえ、お義姉さん、大江さん。今電話があって会社に用事ができたので、先に戻ります。食事は耀兄さんが戻ってからでも同じですから」
そう言って立ち上がった。「では、先に失礼します」