奈々と香取の行動は早かった。その日に帰ってすぐに辞表を出し、翌日はもう一日引き継ぎをして、三日目には初瑶が報告に来た。
今月の給料をもらえるかどうかさえ、彼らにとってはどうでもよかった。
それだけスターライトでは本当に我慢の限界だったのだろう、一日たりともそこにいられなかったのだ。
夏目初美は大江瑞穂と相談した通り、奈々に人事と総務を専門に任せた。
香取はその日のうちに彼女と一緒に住朋へ行き、初瑶と住朋の契約をフォローした。
他にも「先輩が後輩を連れてくる」形や知人の紹介による離婚案件がいくつかあったが、大江瑞穂はちょうどやる気に満ち溢れていた時期で、すべて引き受けた。「夏目初美、あなたは他のことに専念して、これらの小さな案件は私が...疲れるって?以前の残業漬けの日々よりも疲れるわけないじゃない、それに骨折り損のくたびれ儲けってほどじゃないわ」
夏目初美は彼女の情熱を見て、また同時にいくつかの離婚案件を扱うことはそれほど難しくも疲れることでもないと考え、彼女に任せることにした。
こうして忙しく一週間近くが過ぎ、法律事務所全体の運営はほぼ軌道に乗った。
順調な滑り出しだった。
しかし夏目初美の心は日に日に焦りが増していた。遠山陽介が月曜か火曜には工藤希耀が戻ってくるはずだと言っていたからだ。
しかし今は木曜になっても、彼が戻ってくる様子も何の知らせもなかった。
何か問題が起きたのだろうか?
だが夏目初美は表面上それを見せることができず、常に落ち着いて余裕のある様子を装わなければならなかった。
そうしないと部下たちまで緊張してしまう。彼女も以前は雇われる側だったので、社長の気分が社員の晴雨計や風向計になることをよく知っていた。
毎日皆が退社した後、彼女は意図的に最後まで残り、家に帰るまでの時間だけは緊張を解き、全身の力を抜くことができた。
この夜も夏目初美は最後の一人になるまで残っていた。大江瑞穂は両親がまた来ていて、家での食事に誘われたが、彼女はそれを丁重に断った。
幸い、彼女がぼんやりし始めてすぐに遠山陽介から電話がかかってきた。「お嫂さん、もう家に帰りましたか?」
夏目初美の心が動いた。「陽介、希耀が帰ってきたの?今日はもう木曜よ、彼がこれ以上帰ってこなかったら、あなたに文句を言うつもりだったわ」