第186章 帰ってきたのね

夏目初美はようやく理解した。

遠山陽介はずっと彼女のことを……?

でも彼女は今まで全く気づかなかった。彼も今まで少しも表に出したことがなかった。何より、彼と工藤希耀は命を懸けた兄弟のような仲で、お互いのためなら命さえ惜しまず、一瞬の躊躇もなく捧げられる間柄なのに、どうして?

しかし初美はすぐに我に返った。

まずは目の前の危険を取り除かなければならない。さもなければ、三人とも台無しになってしまう!

彼女は勢いよく蛇口をひねり、最大にして陽介に向かって水を浴びせかけた。

同時に急いで言った。「陽介、あなたがそんなつもりじゃないことは分かってる。あなたは耀兄さんの命の恩人で、私にとっても最も頼りになる友人であり兄のような存在よ。ただホルモンの影響を受けただけ。確かに今日の私は……薬の影響で、普通の成人男女なら多少は影響を受けるわよね」

「それに二人きりで、私は立つこともままならず、あなたに抱きかかえられたり支えられたりして……耀兄さんから聞いたけど、あなたも彼と同じように身を慎んでいるから……あなたがそんなつもりじゃないことは分かってる。さっきの言葉は無かったことにして、私も聞かなかったことにするから、まずは出て行ってくれない?お願い……」

陽介は頭から顔まで冷水を浴び、ようやく夢から覚めたように我に返った。そして即座に激しい後悔と自己嫌悪に陥った。

今、自分は一体何を言ったのか。どうしてそんな言葉が口から出たのか。

どれほど渇望し、爆発寸前に我慢していたとしても、心の奥底に押し込め、自分をしっかり抑えるべきだった。——人間と動物の最大の違いは、人間には底線があり、自分の欲望をコントロールできることではないのか?

これからどうすればいいのか。義姉さんに顔向けできるだろうか。耀兄さんが戻ってきたら、彼にどう顔向けできるだろうか。

幸い義姉さんはまだ理性を保っていた。彼女はこれほど長い間薬物に苦しめられながらも理性を保っていたのに、自分の方が先に自制心を失ってしまった。

もし彼女が理性を失っていたら、耀兄さんに会う顔がないどころか、死んで謝るしかなかっただろう!