第185章 もはや隠せない狂気と深い愛情

夏目初美は心が痛んだ。「あなたはあの時、まだ小さかったのね。きっととても怖かったし、助けもなかったでしょう?村の幹部や警察は何もしてくれなかったの?」

遠山陽介は冷笑した。「誰が孤児と未亡人のために、面倒なことに首を突っ込むものか?結局は『家族の問題』だからな。部外者が口出しするものじゃない。警察なんてもっと関わりたがらない。通報したところで動くかどうかも怪しいのに、そもそも通報すらしなかったんだから」

「あの頃は法律という武器を手に取って自分の権利を守るなんて知らなかった。それどころか、警察に通報する勇気すらなかった……」

初美は理解した。「だから私が『誰もが法律という武器を手に取る勇気と決意があるわけじゃない』と言った時、あなたがあんなに反応したのね。やっぱり私の気のせいじゃなかったんだ。本当に残念だけど……まあ、過去のことだし、今あなたが幸せで、これからもっと良くなるなら、それでいいわ」

陽介は初美が自分の感情に特別な注意を払い、今までそれを覚えていたことに驚いた。

心が躍ると同時に、どこか切なくなった。もし彼女と先に出会っていたら……

突然「ピン」という音がして、エレベーターがようやく到着した。

陽介はすぐに不適切な考えを打ち消した。「お義姉さん、やっぱり僕が抱きかかえますよ」

そして返事を待たずに初美を抱き上げ、玄関に入った。

ちょうどその時、北条先生から電話がかかってきた。陽介は初美をソファに慎重に降ろすと、急いで電話に出た。「どこにいるんだ、先に来てくれって言ったのに……何?だったらすぐに来いよ、もう火急の事態なんだぞ……知らないよ、10分以内に来てくれ……最大でも30分だ、間に合わなかったら容赦しないからな!」

初美は体を丸めて、陽介が不機嫌そうに電話を切るのを待ってから尋ねた。「どうしたの、陽介?北条先生は来られないの?」

陽介は口調を和らげた。「今こちらに向かっている途中だけど、追突事故を起こしてしまったらしい。相手の車に患者がいて、ショック状態になったとか。応急処置をして、その人が安全に救急車に乗るのを確認してからじゃないと来られないって」

「でも大丈夫だよ、すぐにまた催促するから、絶対に最速で来てもらうよ。本当に役立たずだな、最初から病院に行けばよかった!」