第184章 彼女はもう耐えられなくなりそうだ

遠山陽介は今、工藤美咲のしたことを思い出すと、まだ心の中が冷え切っていて、彼女を絞め殺したいほどだった。

しかし、これだけ長い年月の感情があり、美咲も彼のことを何年も「陽介兄さん」と呼んできた。彼の立ち位置は最初から工藤希耀とは違っていたとはいえ、工藤先代社長にしても美咲にしても、彼を家族として扱ってくれていた。希耀とは違う扱いだったかもしれないが。

それでも確かに彼をずっと身内として扱い、決して粗末にしたことはなかった。

事態がここまで来てしまった以上、怒りはあるが、救済できることは可能な限り救済すべきだろう。

そこで咳払いをして、「彼女もあの母子に騙されて利用されただけだ。義姉さんを連れて行って...過激な写真を数枚撮るだけだと思っていたんだ。だから問題に気づいて、自分が思っていたのと違うと分かった途端、すぐに一鳴に電話をかけたんだ」

「小さい頃から彼女はそうだった。困ったことがあると、いつも最初に一鳴を頼る。耀兄さんや私にはあまり頼らない。もちろん、今回は私たちに電話するのが怖くて、一鳴に電話して、一鳴から私たちに伝えてもらったのかもしれないけど」

夏目初美は自分の腕をつねってから、うなずいた。「私も彼女が騙されて利用されたんだと思う。本当に悪質よね。お金や利益のためなら、何でもするなんて!」

陽介は重々しく言った。「彼らがそんなことをする勇気があるなら、すべての結果を受け入れる覚悟もあるはずだ!」

少し間を置いて、「義姉さん、美咲をかばうわけじゃないけど、騙されたとしても、写真を撮るのは同じく許せないことだ。安心して。耀兄さんが戻ったら、きっと義姉さんに説明してくれるよ!」

初美は深呼吸して、「はぁ...もし今回のことで彼女があの母子の本性を見抜いて、完全に目覚めてくれるなら、私も実質的な被害を受けなかったし、説明なんていらないわ。首謀者が相応の罰を受けるだけで十分よ」

陽介の声はまだ冷たく沈んでいた。「耀兄さんは必ず義姉さんに説明するよ、それも義姉さんが当然受けるべきものだ...」

言葉が終わらないうちに、電話が鳴った。工藤希耀からだった。「陽介、どうだ?」

声は電話越しでも、温度が全くないほど冷たかった。