第183章 互いに耐え忍ぶ苦悩

阿部潤は得意げに言った。「じゃあ、美咲、君の言いたいことは、もっと動画を撮りたいってこと?安心して、お兄さんはもうすでに考えていたよ。あの女が写真は合成だって言うかもしれないからね。写真は合成できても、動画なら希耀兄さんも信じるだろう?」

「そうすれば、彼は必ず君のもとに戻ってくる。君はまた以前のように幸せになれるし、みんなの生活も元通りになるよ」

工藤美咲は、こんな状況でも彼が自分を騙し続けていることに気づいた。

これまで何度も同じような言葉で騙されてきたことを思い出す。

すでに冷え切っていた心が、さらに冷たくなっていくのを感じた。

自分はなぜあんなに愚かだったのか。まるで目が曇っていたかのように、誰が何を言っても聞く耳を持たなかった。

幸い夏目初美は陽介兄さんに救出されたが、もし...美咲は自分の手のひらを強く握りしめ、それ以上考えることができなくなった。

太田一鳴は彼女が胸を押さえているのを見て、明らかに大きなショックを受けていることがわかった。

冷たく唇を歪め、自ら口を開いた。「美咲はもちろん以前のように幸せになれる、むしろもっと幸せになれるよ。なぜなら彼女はついに周りの小人の正体を見抜いたからね。でも君たち親子が今日からまだ幸せでいられるかどうかは、もう君たち次第じゃないよ!」

阿部潤は驚愕した。「お前...なぜお前がここに?美咲、何をしているんだ、まさか...誰にも言わないって約束したじゃないか?」

太田一鳴の返答は、電話を切ることだった。

そして美咲の方を向いて言った。「行こう、まずは君を家に送るよ。ずっとここにいるわけにはいかないからね」

工藤美咲は夢から覚めたように言った。「いいえ、帰りたくない...私、初美さんに会いに行きたい、直接謝りたいの...一鳴兄さん、彼女に会わせてくれない?彼女、あの時すごく苦しそうだった、今は本当に大丈夫なの?」

一鳴は重々しく言った。「陽介が北条先生に連絡したと言っていた。具体的に問題があるかどうかは、北条先生が診察した後でないとわからない。でもあの人渣が君にくれた薬が良いものであるはずがない...耀兄さんもいないし、とにかく嫂さんは今回、命の危険はなくても、かなりの苦しみを味わうことになるだろう」