遠山陽介は川辺でタバコを吸っていた。足元には吸い殻が散らばり、一晩中風に吹かれていたが、彼は寒さを感じなかった。それでも心は煩わしさと途方に暮れた気持ちでいっぱいだった。
工藤希耀から電話を受けたとき、彼の最初の反応は断ろうとすることだった。希耀に他の誰かに電話するよう言おうとした。
これからは万やむを得ない場合を除いて、義姉さんに会うことも、彼女と耀兄さんの家に足を踏み入れることも、本当にできなくなった。
そうすれば義姉さんも気まずい思いをせず、耀兄さんも問題に気づかず、みんなにとって良いことだ。
残念ながら、断る言葉が口元まで出かかっていたのに、口から出たのは「耀兄さん、心配しないで。すぐに北条先生に連絡して、できるだけ早く連れてきます。まずは義姉さんを頼みます」だった。
電話を切ってから、陽介は苦笑いした。
彼の自制心はいつからこんなにひどくなったのだろう?
しかしすぐに自分を慰めずにはいられなかった。義姉さんが病気になったのだから、緊急事態だ。
それに耀兄さんは今、彼を必要としている。こんなことは彼にしかできない。他の人なら耀兄さんが信用しないだろうし、彼自身も信用できない。最も信頼できる親友を頼るのは当然のことではないか?
そして、陽介が我に返った時には、すでに車のエンジンをかけ、北条先生の病院へ向かっていた。
彼はもう一度決意を固めるしかなかった。今回のことが終わったら、必ず言ったことを実行し、二度と自分を甘やかさない!
1時間後。
医師はようやく夏目初美の検査を終え、寝室から出てきた。
希耀は急いで立ち上がり、医師に近づいた。「先生、妻の状態はどうですか?」
医師は眉をひそめた。「すでに39度以上の熱があります。点滴が必要です。すぐに薬を用意しますが、早く熱を下げないと肺炎になる恐れがあります。こんな寒い日に、患者さんがなぜ冷水に落ちたのですか?ご家族はあまりにも不注意ですね。」
「それに、患者さんはすでに病気なのに、なぜまだ...咳、夫婦の営みを節制しなかったのですか?患者さんはあそこが赤く腫れて、裂けそうになっています。これも彼女が発熱した原因の一つです。今後はご家族がもっと注意されることを願います。お互いのためにも。」