第208章 人が無能なら道のせいにする

しかし青天の霹靂、水野雄太の父は突然上司から告げられた。組織は彼の年齢と健康状態、そして家庭の事情を考慮したと。

そのため検討の結果、当面は重要な任務を任せないことに決めたという。「……長瀬川さんがこれからも職務に忠実で、活躍してくれれば、将来必ずチャンスはあります！」

父はもうすぐ60歳だ。今回昇進できなければ、今後どんなチャンスがあるというのか？

さらに悪いことに、父は以前は常務副書記長だったが、書記長が長年健康を害していたため、父は実質的には名前はなくとも実権を握る書記長として、真の権力者だった。

しかし今や、新しい若くて有能な書記長がすぐに空から降ってくるという噂だ。

そうなると父の副書記長という地位は何の意味があるのか。上も下も父がもう行き詰まったことを知っている。誰が父の言うことを聞くだろうか？父は第二線に退いたも同然で、何が違うというのか？

水野雄太はここで初めて本当に慌てた。

確かにここ数年、彼のキャリアは順調で、何もないところから始めて小さくない成功を収めた。親戚一同が口を揃えて称賛する対象だった。

しかし、彼は自分が本当に何もないところから始めたとか、家族からの助けなしに全て自分の力だけでやってきたと思い上がるほど自惚れてはいなかった。

実際、お金から人脈まで、家族は彼に多大な支援を提供してきた。彼の最大の自信は、常に父親であり、背後にある家族という強固な大木だった。

しかし今、彼の大木も危うく、もう頼れなくなりそうだった。

水野雄太が元凶である工藤希耀を恨まないわけがない。——父はすでに様々な方面から情報を集めていた。上層部の誰かが父を快く思っていないらしい。もちろん、父は官界でこれほど長く生きてきたのだから、多かれ少なかれ弱みの一つや二つはあるだろう。誰も追及しなければ、何も問題はない。しかし一度誰かが追及し始めれば、基本的に一発で的中する。

だから、第二線に退かざるを得ないことが父の最大の心配事ではなかった。父が最も心配していたのは、もし晩節を汚すことになれば、本当に終わりだということだった。

上層部の人物が誰なのか、そして父を快く思わない理由は何なのか。

父はあまり具体的なことは聞き出せなかった。ただ回りまわって聞いたところによると、どうやらある財閥の大物と関係があるらしい。