第227章 「パパ」と呼んでも無駄?

夏目初美は夜になってようやく工藤希耀に電話をかけた。

それでも希耀は先に電話を切り、しばらくしてからビデオ通話をかけ直してきた。「初美、さっきは人が多くて話しづらかったんだ。ご飯は食べた?……もうお風呂も済ませたみたいだね、一緒に入ろうって言ってくれないなんて。幸い水曜日には帰れるから、午後5時半に飛行機に乗って、8時には家に着けるよ」

「その時はハニーは空港まで迎えに来なくていいからね、家でいい匂いのするお風呂に入って待っていてくれればいい。もちろん、どうしても来たいというなら、車の中でちょっとした楽しみを味わうのもいいかもね、きっと違った感覚になるだろうな、考えただけでワクワクしてきた」

初美は呆れながらも笑ってしまった。「人が多くて話しづらいって言ったばかりなのに、こんな下ネタを言って、誰かに聞かれたらどうするの?顔が赤いけど、お酒飲んだの?接待中?」

希耀は「うん」と答えた。「岡山市のプロジェクトチームと工藤家の合同祝賀会で、断れなくて少し飲んだんだ」

初美は急いで言った。「少しどころじゃないみたいね。何か食べ物で胃を落ち着かせたり、二日酔い対策や胃薬は用意してる?今度帰ってきたら、あなたの胃をしっかり治さないと。このままじゃ、今は若いからいいけど、年を取ったら絶対に苦労するわよ!」

さらに続けた。「じゃあ切るね、今どこにいるの?トイレ?どこかで少し休んで、落ち着いたら?後でまた話せばいいから。そうそう、おめでとう、大きなプロジェクトを見事に獲得したのね、あなた本当にすごいわ、お疲れ様!」

希耀は笑った。「誰が初美に僕たちが入札に成功したって教えたの、陽介?休む場所を探す必要もないよ、今ちょうど休んでるところだから。初美、君は僕にとって最高の二日酔い対策であり仙薬なんだ。君の笑顔を見て、声を聞くだけで、全身の疲れが一気に消えるよ」

初美の口角は思わず高く上がっていた。「なんて甘い言葉なの、でも岡山市の料理って辛いものが多いんじゃないの?」

少し間を置いて、「陽介から聞いたわけじゃないの、私と美咲がマルイにいた時に、ふと見上げたらあなたがインタビューを受けてるところだったの。あれは全国ニュースチャンネルだったわね、工藤家は今回、業界内外で大きな話題になったんでしょ?」