第231章 私の旦那様は本当に上手いわね

考え込んだ後、夏目初美は作り笑いを浮かべて工藤希耀に尋ねた。「工藤社長、この『小さなサプライズ』はいくらしたんですか？数千万円くらいでしょう？確かに小さなサプライズですね、小さすぎるくらい。工藤社長も工藤希耀なんて名乗らずに、『ファンエルホ』に改名したらどうですか！」

希耀は彼女の言葉に思わず笑みを漏らした。「だって初美が先ほど、大きなホオジロザメか青い鯨、それとも島をプレゼントするつもりかって聞いたじゃないか。最初の二つは売買が違法だから無価値だし、島だって、どんなに小さくても9桁か10桁の金額がなければ手に入らないだろう」

「そう考えると、僕のプレゼントは小さなプレゼント、小さなサプライズとは言えないよね？そう言っても間違いじゃないでしょ」

初美は「ふふっ」と笑った。「確かに間違いじゃないわ。聞いた人が金持ちを恨んで、強盗して貧しい人に分け与えたくなる以外は」

そして真面目な顔で続けた。「ねえ、このヨットって本当にいくらしたの？あなたたちはちょうど大きなプロジェクトを受注したところで、あちこちでお金が必要な時期でしょう。私はヨットの操縦なんてできないし、普段は二人とも忙しいし、たまに海に出たいと思っても近海を回るだけなら、ヨットをレンタルすれば十分よ」

「牛乳を飲むために牛を買う必要はないでしょう？必要ないから、早く転売して現金化してね」

希耀は親しげに彼女の鼻先をつついた。「もう旦那のためにお金を節約しようとしてるの？さすが旦那の良きパートナーだね。でも、すでに贈ったプレゼントを取り戻して転売するなんて道理があるかい？」

「大丈夫だよ、全部合わせても5000万円にもならないし、僕の個人口座から出したから、会社にも旦那にも影響はないよ。君の旦那は何年も必死に働いてきて、それなりの蓄えはあるんだ。たまには自分を労わって、妻にプレゼントを贈り、自分もその恩恵にあずかりたいと思うのは当然だろう？ハニー、そんなに心配しないで」

「でも…」初美がまだ何か言おうとすると、

希耀は彼女の言葉を遮り、彼女を抱き寄せてヨットへと歩き始めた。「もう『でも』はなしだ。まずは上がって気に入るかどうか見てみようよ」