第237章 突然の強さ

工藤美咲の目的地はバーだった。

夏目初美はまだ入り口にいたが、すでに眉をひそめずにはいられなかった。一鳴があの後輩と会うなら、静かで雰囲気のある場所を選ぶべきだろう。そうしてこそ心の内を打ち明けられるはずなのに。

どうしてバーのような騒がしい場所を選ぶのだろう?美咲が間違えたのではないだろうか?

しかし、静かで雰囲気のある場所よりも、明らかにバーの全体的な雰囲気の方が親密さを感じさせる。さらに数杯のお酒が入れば……

初美が考えていると、美咲から再び電話がかかってきた。「お姉さん、着いた?着いたらすぐ入ってきて、私はカード5番にいるから、店員に聞けばわかるわ、早く……飲まない、踊らない、うるさいわね!」

初美は向こうが確かにとても騒がしいのを聞き取った。誰かが美咲に声をかけているようだった。

急いで電話を切り、大股で中に入っていった。

幸いカード5番はすぐに見つかり、初美は苦労せずに美咲を見つけた。「美咲、もう長く待ってたの?さっきはどうしたの?大丈夫?それに飲んでるのは何……ソフトドリンクならいいけど、あなたの手や視界から離れたものは、たとえソフトドリンクでも飲まないで、わかった?」

美咲は急いで初美を引っ張って座らせた。「わかったわ、お姉さん。安心して、そんなに馬鹿じゃないから。ほら、一鳴兄さんたちはあそこよ。あの人たちは見たことないから、きっとあの後輩の友達なんでしょうね。さっき彼らがお酒を飲むとき、いつも二人で一緒に乾杯してたわ。見たところ、みんな二人がカップルだと思ってるみたい!」

初美は美咲の口調が酸っぱく聞こえた。

急いで小声で言った。「美咲、焦らないで。一鳴が二人はまだ正式に付き合い始めていないと言ったなら、それは本当なんじゃないかしら。彼にはあなたを騙す理由がないでしょう?だから、もう少し様子を見てみましょう。必要な社交辞令かもしれないわ」

「それとも、後で適切なタイミングがあれば、一鳴を呼んで直接聞いてみるのもいいかもしれないわ。彼は嘘をつかないと信じているし、もし何かしたなら、きっと責任を取る人だと思うわ」