第250章 兄弟の間で

遠山陽介は恥ずかしさで顔を赤らめた。「だから、耀兄さん、俺を殴ってくれ。思いっきり殴って、死ぬほど殴ってくれ。俺は眉一つ動かさないし、文句も言わない。全部俺が受けるべきことだから……」

言葉が終わらないうちに、工藤希耀の拳が風を切って振り下ろされてきた。

陽介は不意を突かれ、長年の訓練で身についた本能で反射的に頭を傾け、足を引いて、危うく避けた。

希耀は冷笑した。「眉一つ動かさないんじゃなかったのか？なぜ避ける？」

陽介は恥ずかしさと後悔で一杯になった。「すみません、耀兄さん、気をつけていませんでした。もう一度やってください、今度は絶対に避けません……げほっ……」

またしても言葉が終わらないうちに、希耀の拳が再び飛んできて、陽介は闇雲に唸った。

確かに今回は避けなかった。

しかし明らかに一発では希耀の怒りは収まらず、続けざまに数発の拳が飛んできた。

殴りながら、歯を食いしばって低い声で言った。「お前が俺に罵られたいなら、遠慮はしないぞ！俺がお前に良くしていたことは知っているんだな。俺がお前に良くしていたからこそ、お前は俺の妻に手を出そうとしたのか？」

「笑わせる。以前は俺がお前に彼女を頼んで面倒を見てもらっていたのに、その時からもう彼女に目をつけていたんだろう？彼女に目をつけるだけでなく、チャンスを作って、隙を突こうとしていたんじゃないのか？そんなことを考えていなかったなんて言うな、信じないからな。男同士、お前の頭の中で何を考えているか、俺にはよくわかるんだ！」

「『友人の妻に手を出すな』という言葉も知らないのか？」

「それとも、これだけの長い付き合いでも、お前の心の中では、その見苦しい思いに勝てなかったのか？あの夜、お前は何度も葛藤して、やっと人の弱みに付け込んで最後の一線を越えることを我慢したんだろう？俺の妻をお前のものにすることを？この数日間、あの日なぜ最後の一線を越えなかったことを後悔していないはずがないだろう？」

陽介は殴られて顔と腹部に激痛を感じ、何度もよろめいて、あと少しで地面に倒れそうになった。

しかし彼は希耀の容赦ない暴力は耐えられても、このような人を傷つける言葉は耐えられなかった。