工藤美咲は太田夫人の視界から外れたことを確認すると、夏目初美に近づいて耳打ちした。「お姉さん、安心して。私は大丈夫だから。だから、お兄さんには言わないでね。私のことを心配しないで。これからは自分で対処するし、自分の道は自分で歩むから、いい?」
初美は先ほどの美咲の対応に感心していた。
小声で言った。「さっきまでは少し心配してたの。あなたがおっとりしていて傷つくんじゃないかって。一鳴のために妥協するんじゃないかって。でも今は心配してないわ。あなたは全て上手く処理できる能力があるもの。太田夫人も賢い人だから、もうこのような事は起きないでしょうね」
美咲は頷いた。「私も太田叔母さんは賢い人だと思います。本当に息子を愛している母親なら、息子を困らせたくないはずです。それに、今の私はこんなに可愛いんですから、彼女も情が移って、時間の問題でしょう」
初美はくすくす笑った。「誰かさんの顔が大きくなってきたわね...いや、そうね、あなたの言う通りよ。今のあなたはとても可愛いから、誰が好きにならないでしょう?私なんて、あなたを嫁に出すのが惜しいくらいよ。ねえ、今から希耀に言って、7月の婚約はやめて、少なくとも来年まで待つようにしようか?」
「あるいは、私たちが本家に戻って住むのはどう?そうすれば、誰かさんが公認になったからといって、好き勝手できなくなるわね」
美咲は干笑いした。「お姉さん、私、何かしました?いいですよ、お兄さんとお姉さんが本家に戻るなら最高です。そうしたら毎晩お姉さんと一緒に寝ますから。さあ、お互いに傷つけ合いましょう!」
初美は彼女をじっと見た。「本当に色に目がくらんで義姉を軽んじる奴ね。まあいいわ、やっぱり同じことを言うわ。娘は大きくなったら止められない、好きにさせましょう、南無阿弥陀仏!」
美咲はプッと吹き出した。「お姉さん、そんなこと、お兄さんに聞かれたら大変ですよ。出家するつもりだと思われて、きっと心配するでしょうね」
話しながら、二人はテーブルに戻った。
希耀と一鳴は太田さんと話していたが、注意はすでにそれぞれ初美と美咲に向けられていた。
二人が近づいてくるのを見て、一鳴が先に笑顔で言った。「美咲、大嫂と何を話していたの?そんなに楽しそうで」
希耀も笑った。「トイレに行くのにそんなに時間がかかるなんて、女性は本当にすごいね!」