第272章 あなたが咲き誇れば蝶は自ずと寄ってくる

久山葵は夏目初美に自分が強がって笑っていると誤解されるのを恐れていた。

結局のところ、初美は双葉学明や双葉俊哉と血縁関係があり、林田愛子とも長年の情がある。

彼女とは、ほんの数年の義理の姉妹関係しかなく、しかもあまり親しくはなかった。

急いで笑いながら言った。「そうよ、いとこ。私たちは本当に心からのものよ。あなたのいとこの言うことは言い方は悪いけど理屈は通ってるわ。旦那さんの名義の資産がどれだけあっても、あなたの名義にあるのとは、少しだけ違いがあるわ。受け取ってちょうだい。将来、天天や可可が結婚する時に、叔母さんとして大きな祝儀袋を包めばいいのよ」

葵はバカではない。どうして金の神様と仲違いするだろうか?

それに初美の性格も好きだし、他のいとこたちより十倍も優れている。

彼女はもちろん気にしないだろう。

初美は既に手を振って笑っていた。「叔父さん、叔母さん、いとこたち、これについては全く心配しなくていいのよ。私の名義の資産はたくさんあるわ。自分の法律事務所と貯金の他に、希耀は彼の名義で移せる資産を、私が知らないうちに全部私に移してくれたの」

「だから今、あなたたちの前に座っているのは、少なくとも億万長者よ。それに、私と希耀はとっくに婚姻届を出したから、彼の持っているものは全て私たちの共有財産なの。これで安心できるでしょう?」

全員が大いに驚いた。

学明は急いで言った。「初美、つまり希耀は婚前契約を結ばなかっただけでなく、与えられるものは全て自ら進んで君にあげたということか?」

初美は笑いながら頷いた。「工藤家の株と六本木ヒルズレジデンスの一軒を除いて、他は全部私に移してくれたわ。今、個人資産を比べたら、彼の方が私より少ないかもしれないわ。だって株は売れないし、家も売れない。だから彼自身が言うには、今は『養ってもらっている身』だって」

学明はようやく笑った。「希耀は本当に、どう褒めていいか分からないな。初美、叔父さんはもう一切心配していないよ」

愛子と俊哉も感嘆した。「なるほど、さっき初美が希耀は何も隠さないと言ったのは、本当に何も隠さないということだったのね」

「テレビドラマでしか見られないようなシーンが、まさか身近で実際に起こるなんて!」

葵は顔いっぱいに羨望の色を浮かべていた。