第302章 いわゆる人命に関わる問題

老人は少し黙り込み、どう夏目初美に話すべきか迷っていた。

さっきまでは情状酌量の余地があり、過分ではないと思っていたことが——確かに人命が関わることだ——初美に一通り叱られた後では、急に言い出せなくなっていた。

外から急ぎ足の足音が聞こえてきた。

続いて藤原秘書のやや慌てた声が響く。「長官、工藤さんが到着しました。門のところで警備と揉めています。私が警備に少し待つよう指示し、あなたの許可を得てから通すつもりでしたが、彼は待ちきれずに先に手を出してしまって……」

老人の顔色が一気に険しくなった。「中に入って話せ!」

藤原秘書が入るなり、すぐに言った。「なぜ警備に待つよう言った?連絡があったのだから、すぐに通すように言えばいいものを、余計なことをして!何をぼんやりしている、早く迎えに行け!」

「はいはいはい」

藤原秘書は慌てて返事をし、小走りで出て行った。

初美はようやく冷ややかな目で老人を見た。「やっと私の夫が来ましたね、満足ですか?先ほども言いましたが、あなたがどんな魂胆であれ、彼を脅したり傷つけたりすれば、私は命を懸けて戦います。皆で死にましょう!」

老人は意味深に微笑んだ。「彼の来るのは早いな、私の想像よりずっと早い。どうやら彼も全く無防備というわけではないようだ。なるほど、あれほど大きな企業集団を順調に経営し、皆から一目置かれるわけだ」

初美は嘲笑した。「でもあなたの高い地位と権力の前では、どうすることもできず、あらゆる面で圧力をかけられ、こんな夜中に駆けつけて、会いたくもない人に会い、したくもないことを強いられるんでしょう?」

「さぞかし得意でしょうね。昔は彼の命を操り、今は彼が屈服したくなくても屈服せざるを得ない状況に追い込み、世間の目には人生の頂点に立っていても、結局あなたの掌の上から逃れられないんですから!」

老人は首を振った。「そんなことはない。彼が私に会いたくないことは分かっている。もし万やむを得なければ、こんな策は取らなかった。生涯彼を煩わせることはなかっただろう」