夏目初美は理解した。藤原秘書にしても、あの「大丸社長」にしても、おそらく工藤希耀の敵だろう。
敵でなくとも、何らかの利害関係があるのは確かだ。彼らは希耀から利益を得られないので、彼女に目をつけたのだ。
彼女は不思議に思っていた。京都市にはたくさんの有名な法律事務所があるのに、なぜ彼らは法律顧問を探すのに、わざわざ遠い神戸市まで来たのか。
そういうことだったのか。
もっと早く気づいていれば、もっと慎重になって、この仕事を引き受けなかっただろう。——「大丸社長」も女性で、初瑶がすべての家庭内暴力被害者を助けようとする志を聞いて感銘を受け、尊敬しているから協力したいと言われたのだ。
このように彼女の好みに合わせなければ、彼女がこんな簡単に騙されるわけがなかった。
しかし今となっては、いくら「もっと早く気づいていれば」と言っても遅い。
初美はすぐに自分を落ち着かせた。「藤原秘書に悪意がないなら、最初から私にはっきり言えばよかったのに、なぜこんな回りくどいやり方をするのですか?もし本当に悪意がないなら、私が知った後でも話し合いの余地はあるはずです。協力して互いに利益を得るか、私が夫を説得するか、どちらも可能です」
「でもあなたたちはこのような方法を取った。あなたたちに悪意がないと信じろというのですか?あなただったら信じますか?万が一、悪意がないとしても、あなたたちの要求はきっと非常識なものなのでしょう。だから夫は承諾できなかったのでしょう。私を拘束したところで、彼は妥協しないでしょう」
「むしろ彼を怒らせて、事態をさらに悪化させる可能性が高い。今のうちに私を解放して、再度交渉した方がいい。あなたたちが誠意を持って、要求も法に触れないものなら、まだ望みはあると思います。藤原秘書、考えてみてはどうですか」
藤原秘書は笑った。「さすが夏目弁護士、弁護士だけあって口がお上手ですね。残念ながら、我々は工藤さんに一度や二度接触したわけではありません。今まで話し合いの余地があるようには見えませんでした。どんな条件でも受け入れると言っても、工藤さんは聞く耳を持ちません。工藤家にプレッシャーをかけ、あらゆる方面からプレッシャーをかけて彼を強制しようとしても、彼は同意しません」