第340章 心は犬に食われた

藤原秘書は夏目初美の目に宿る冷たさを見て、彼女が何を送ろうとしているのか見当もつかなかった。

しかし、彼の上司が見た後で、彼を困らせないものであるなら、おそらく彼が見てはいけない、見るべきではないものなのだろう。

だから後で絶対に注意しなければ。うっかりクリックして、見るべきではないものを見てしまったら、後悔しても遅いのだから!

それに初美はかなり自信ありげに見え、口元の笑みもどう見ても嘲笑的だった。もしかして、彼女が送ろうとしているものは、上司の何か弱みになるものなのか。

彼女は上司以外の弱みも握っているのかもしれない?

藤原秘書の心はますます不安になった。

しかし不安はあれど、彼はついに彼のレベルの高級秘書としての資質と決断力を発揮した。

前に出て、西園寺老夫人の腕を取り、「老夫人、工藤夫人の言うことを聞いて、まずホテルに戻って休みましょう。一日中お疲れでしょう。これ以上休まないと、体がもたなくなりますよ」

西園寺老夫人はまだ帰りたくなかった。「帰るなんてとんでもない、私はまだ話し終わっていないのよ、離して...離しなさいって言ってるでしょ!」

しかし藤原秘書はすでに初美の方を向いていた。「工藤夫人、これは私の名刺です。電話番号とメールアドレスが書いてあります。準備ができたら直接私に送ってください。常に確認していますので、受け取り次第すぐに上司に転送します。ご安心ください」

初美は二本の指で名刺を受け取り、頷いた。「すぐに送ります。お気をつけて」

藤原秘書は西園寺老夫人の抵抗と不満を無視し、「離して、離しなさい、反抗するつもり?...」

半ば支え、半ば強制的に彼女を外に連れ出した。

初美のオフィスにようやく静けさが戻った。

彼女はやっと長い息を吐き出した。まるで最も手ごわい相手の弁護士やクライアントと知恵比べをした後よりも疲れていた!

彼女が自分のために水を一杯注いだところで、大江瑞穂がドアを開けて入ってきた。「どうしたの、初美?小池さんによると客じゃないみたいだけど、なんであんなに騒がしかったの?何度も入って助けようと思ったけど、あなたが誰も呼ばない限り入るなって言ってたから、我慢したわ」