藤原秘書は焦りと慌てを隠しながら、なんとか落ち着いて老人を車に乗せた後、
すぐにエンジンをかけ、急いで街へと車を走らせた。
夏目初美はようやく工藤希耀の方を向き、小声で迷いがちに言った。「まさか本当にこのまま...死んじゃったりしないよね?人が血を吐くのを実際に見たのは初めてで、現実ではほとんどあり得ないと思ってたけど...まさか...良心の呵責のダメージは、想像以上に大きいってこと?」
希耀は冷ややかに鼻を鳴らした。「彼が二晩続けて徹夜して、体が既に限界だったって話じゃないか?それに大事な息子を失ったばかりで、心は苦しんでいる。だから良心の呵責を受けたとしても、それは二次的なもので、それだけで血を吐くほどじゃない」
「それに災いは千年続くものだ。彼がこんな簡単に死ぬわけがない。死なないさ!」
初美は考えてみると確かにそうだと思った。「彼はいつでも最高の医療を受けられるから、血を吐いたとしても、本当に命の危険があるとは思えないわね。でも今回は命の危険がなくても、次はどうなるかわからないし、これから他のショックを受けないという保証もないわ」
「だから私たちが直接手を下す必要はないって言ったでしょ。神様が私たちの代わりに裁きを下してくれるわ。ほら、もう始まったじゃない?それに次は私たちの目の前じゃないだろうから、119番に電話するべきか、見殺しにするべきか悩む必要もないわ」
「結局、敵だとしても、目の前で死んでいくのを見るのは...やっぱり...できないわ。ねえ、怒ってない?」
希耀は彼女の頭を優しく撫でた。「なぜ怒る必要がある?もし本当に見殺しにできるなら、それはもう君じゃない、僕の愛する初美じゃない。だから確かに気持ちよかったけど、君を止めようとは思わなかった。それに、このまま死なせたら、彼にとって楽すぎるじゃないか?」
「少なくとも数ヶ月は良心の呵責と苦しみを味わわせて、それから母さんと僕に対して何らかの償いをさせるべきだ。どんな償いをするのか見てみたい。もし本当に言った通りに死んで謝罪するなら、僕も彼を認めるよ!」
初美は言った。「とにかく様子を見ましょう。もし今回本当に言葉通りにするなら、それが一番いいわ。彼はすでに何年も余分に楽しんできたんだから、今回命を代償にしても元は取れてるわ。そうでなければ、また私たちが動けばいいだけよ」