もちろん、藤原秘書は老人の側近秘書とはいえ、細部まで全て把握しているわけではない。
彼が知っているのは大まかなこと、彼が知り得る範囲のことだけだ。
しかしそれでも、夏目初美はその大部分の詳細を推測することができた。
前回京都市での老人の書斎で、彼女は老人から昔、夫婦で一度離婚したことがあると聞いていた。そして当時の西園寺夫人の表情から判断すると、夫人が主な過失者だったようだ。
それならば、これらの年月、西園寺夫人がどのように屈辱を飲み込み、妥協してきたかは、基本的に推測できる。
もともと過失者であったうえに、老人はますます出世し、男女の力関係や地位、発言権が不均衡になっていった。
さらに西園寺老夫人というやっかいな存在も加わって。
西園寺夫人は長年耐えた末、ついに息子の死、そして息子の遺体がまだ冷たいうちに姑が彼女の傷口に塩を塗るのを待ちきれなかったこと、さらに彼女と娘たち、孫娘たちの切実な利益を明らかに損なうこと...これらの打撃と傷が絡み合って最後の一本の藁となり、彼女を押しつぶしたのだ。
断固として離婚を申し出て、「誰が説得しても無駄で、離婚する決意は固い」と。
それなら筋が通って理解できる。
初美はそこで冷ややかに言った。「なるほど、藤原秘書があなたの上司は『私事も複雑で、家庭は混乱している』と言ったわけですね。一方は離婚を主張し、もう一方は何があっても離婚したくないと言えば、混乱するのは当然でしょう。あなたの言う『誰が説得しても無駄』というその『誰』とは、実際にはあなたの上司と老夫人だけではないですか?」
「結局、あれだけの大物指導者なら、評判が何よりも大切で、高齢になって離婚するという『汚点』は許されないでしょうし。あなたの家の老夫人も言っていましたよね、西園寺家では絶対に離婚は許されないと。」
「あなたの家の夫人が少し気の毒に思えてきました。誰が想像できたでしょうか、もう21世紀半ばに近づいているのに、彼女は本当に心が冷え切って、結婚生活をもう続けられないと感じているのに、離婚する自由さえないなんて?」
藤原秘書は実際、自分が余計なことを話してしまったことを後悔していた。
上司はこれらのことを話すよう指示していなかった。彼は以前、自分の思い込みで十分な苦い経験をしたではないか。