第368章 決裂

残されたのは双葉俊哉だけで、彼は夫婦の背中が瞬く間に消えていくのを目の当たりにした。

工藤希耀が先ほど彼に向けた一瞥を思い出す。それは警告でもなく、特別な意味を持つものでもなかったはずだ。

しかし、同じ双葉姓の者たちが夏目初美を困らせ、希耀の機嫌を損ねたことを考えると。

腹立たしさが込み上げてきた。「大伯父さん、小姑さん、さっき父と母は休息が必要だと言ったでしょう?聞こえなかったんですか?聞こえなかったなら、もう一度言いますよ。はっきり言いましょう。ここではあなたたちは歓迎されていません。すぐに出て行ってください。出て行かないなら、看護師を呼んで警備員に追い出してもらいますよ」

「誰があなたたちに会いたいと思うんですか?自分たちがそんなに歓迎されると思ってるんですか?まるで田んぼのヒルみたいに、人の血を吸うだけでなく、見た目も恐ろしくて気持ち悪い。どうして歓迎されると思うんですか?できれば一生関わりたくありません。どうせあなたたちは人を不快にさせるだけで、得になることがあれば誰よりも早く駆けつけるくせに、助けが必要な時、命が危ない時には誰一人として姿を見せない!」

俊哉が希耀を「財神様」と思っているだけではなく、希耀と初美が父の命を救ってくれたからだけでもない。

学成と淑美が初美を罵るのを見過ごせなかった理由は。

彼らがようやく今になって病院に来たことに本当に腹を立て、心を痛めていたからだ。

久山葵が一時的に来なくていいと言ったからといって、本当に来ないでいられるものだろうか?

命の危機に瀕しているのは彼らの実の弟、兄、叔父、義理の兄弟、血は水よりも濃いはずの人間だ。

これまで何年も、誰かの家に何かあれば、お金も労力も惜しまず、誰よりも早く駆けつけてきた。

そして父への恩返しがこれなのか?

もし父が輸血や親族しかできないことが必要になったら、彼らがいれば少しは助けになり、頼りになったのではないか?

それとも、母を見守り慰めたり、家に帰って双子の子供たちの面倒を見たりすることもできたはずだ。

彼が求めていたのは、彼らが実際に何かをすることではなく、ただその姿勢だけだった。

しかし何も言わず、何もしなかった。

このような所謂親族が来ても、一体何の役に立つというのか!